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山崎元のマネー経済の歩き方

「相場観」という言葉のあれこれ

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第241回】 2012年9月3日
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 運用会社、証券会社、銀行でも市場部門など、マーケットに関わる仕事では「相場観」という言葉が頻繁に登場する。

 この世界では「相場観の一つも語ることができないヤツは、一人前ではない」とされている。マーケット関係者の間では、相場観を問われたら、自分が現在心に抱いているストーリーを語るのが、一種の礼儀でありあいさつだ。ストーリーとは「マーケットおよびマーケットに関連する現状認識と、これを前提として、マーケットの今後についてどのように予想するか」のことだ。株式の世界なら、いかなる想定の下にTOPIX(東証株価指数)や日経平均株価が今後どのように推移するかとか、外国為替の世界なら、為替レートが今後どうなるか、に対する個人の見方だ。難しいことはない。少し慣れると、誰でも言える。

 一時的かつ局所的なものではあるが、相場観の「観」は、世界観の「観」と同じニュアンスだ。

 自分の感じ方だという意味で、「相場感」という字を当てる人もいるが、筆者は「相場観」のほうがしっくりくる。

 一般投資家にとって、相場観を意識することが重要な理由は、一つの意見が、どの程度特定の相場観に基づくものなのかを判別することが大切だからだ。

 例えば、「今、金貨を買うことが、いいと思いますか?」という問いに対する答えを考えよう。

 「世界的に低金利だし、通貨というものに対する信認が低下しているので、いいのではないでしょうか」(低金利、通貨の信認低下はいずれも金の買い材料だ)という答えがあり得る。他方、「金の現物を持っていても利息も配当も生まないから、これは投資ではなく投機です。それに、金相場に賭けるなら金貨は売り買いの値差が大きくて非効率的でしょう」という答えもある。両者の区別が重要だ。

 雑誌などの「マネー運用特集」で問題なのは、前者のような特定の相場観に基づく意見と、後者のような特定の相場観から独立した事実とを区別せずに混在させたままで、「金は今『買い』なのか、否か」について結論を出そうとしたり、両論併記(メディアのヘッジでありリスク管理の一種だが)でお茶を濁そうとすることだ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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