社会保障と税の一体改革関連法案が衆参両院を通り、消費税率が引き上げられる日程が決まった。増税は誰にとっても嫌なことだが、これで社会保障制度に対する安心が得られれば、我慢するほかはない。

 しかし、本当にこれで安心と言えるのか。1つだけ問うとすれば、肝心要の年金制度の見直し案がどこに行ったのかという点に、大きな疑問がある。

 7月に民主・自民・公明党の間で三党合意が結ばれ、最低保障年金制度の取り扱いは2013年度に棚上げされた。そして、政治の世界では、消費税増税の前に、衆議院を早期解散し、国民に対して「近いうちに信を問う」と言われている。

 しかし、消費税を10%に引き上げると同時に、一体どんな社会保障制度が実現するのかが明確でないと、消費税増税の正当性を考える判断材料のないまま、国民は判断を求められることになりかねない。

年金が返ってこないと
疑っている国民は多い

 社会保障問題の深刻さは、国民の間には、「自分たちが掛けた公的年金が、将来、返ってこなくなる」という不信感が蔓延していることではあるまいか。そう信じ込んでいる人は、特に若い人に多い。

 この「年金は返ってこないかもしれない」という可能性を論証することは、そう簡単なことではない。国民年金の場合の数値例で見てみよう。

・月々の国民年金の保険料が1.5万円だとして年間で18万円。

・これを40年間掛け続けると、自分が払い込んだ金額は累計で720万円になる。

・これで老後にどのくらい戻ってくるのか。男性の平均寿命が80歳、女性が86歳だとしよう。65歳から支給が開始されるとして、男性の受給期間は15年、女性は21年となる。