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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

米国の巨額赤字と中国の巨額黒字がもたらす
「グローバル・インバランス」の危うさ

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第10回】 2012年9月10日
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誰が需要を牽引するのか

 世界経済が順調に拡大した「大いなる安定」と呼ばれる20年。その崩壊の口火を切ったリーマンショック。それに続く欧州危機の広がり。そして大きな壁にぶつかっている中国経済。──前回まで、経済における世界の主な動きについて整理してきた。日本経済の今後の進路を考える上で、世界のこのような動きを理解することは重要である。

 今回は、こうした世界経済の流れを「グローバル・インバランス」という視点から考えてみたい。すなわち、世界全体の需給バランスがどのような形で調整されていくのかという問題だ。

 リーマンショックまでの時期、世界の需要は米国が牽引してきたと言っても過言ではない。1990年代からの資産価格の上昇のなかで、米国経済は超過需要の状態を続けてきた。消費性向は上昇し続け、企業の投資も旺盛であった。政府の財政赤字もあいまって、米国経済は貿易収支や経常収支は赤字を続けていった。

 米国の赤字をファイナンスする上で、最も大きな役割を果たしたのは中国である。巨額の貿易黒字や経常黒字を出した。それによって生み出された投資資金で、米国の債券などを購入したのだ。

 中国人民銀行の巨額の介入は、中国が外貨準備で膨大な米国債を保有する結果をもたらす。それ以外にも中国は潤沢な経常収支黒字の資金を利用して、米国の債券や不動産あるいは株式などを購入していったのだ。

前回述べたように、米国側はこうした中国の姿勢を強く批判してきた。人民元を安くすることで、米国への輸出を増やし、米国の雇用を奪っているというのだ。こうした米国の批判は一面では正しい部分もあるが、経常収支の大幅な赤字を出すほどの米国の過剰支出も問題であり、中国資金によるファイナンスがなければ、米国経済が立ち行かなくなることも事実だ。

 こうした状況をグローバル・インバランスと呼ぶことがある。米国の膨大な赤字と中国の黒字によって支えられる国際的な財の需給の均衡は、不自然なものであり、その状況が持続可能であるとは思われないからだ。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

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