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野口悠紀雄の「経済大転換論」

ヨーロッパ金融危機は、ソブリン・バブルの崩壊

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第32回】 2012年8月30日
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 ギリシャ国債(10年債)の利回りは、2012年の初めに35%という異常な水準に達した。しかし、急騰したのは比較的最近のことである。09年までは、4~5%の水準だったのだ。

 スペイン国債(10年債)の利回りも、10年までは4~5%の水準だった。10年の11月頃になって上昇を始めたのである。イタリアも似たような事情だ。

 なぜ最近になってこうした変化が生じたのだろうか? ファンダメンタルズ(経済の実態)に何か大きな問題が起きたために、こうしたことになったのだろうか?

 以下では、そうではなく、「市場のムードの変化によって利回りが変化した」、つまり、「ヨーロッパ金融危機はバブルの発生と崩壊だ」と論じる。

「ギリシャ問題」は存在していたのに、
国債利回りは高騰しなかった

 ユーロ問題の始まりは、ギリシャ政権交代による国家財政粉飾決算の暴露だった。2009年10月、ギリシャでパパンドレウ新政権への交代が起こり、それまで対GDP比3.7%とされた財政赤字が、実際には12.5%であると発表された。これは、国債規模を「粉飾」したもので、それにはゴールドマン・サックスとのデリバティブ取引が関係していたと言われる。

 12月には、スタンダード&プアーズ(S&P)は、ギリシャの長期格付けを引き下げた。

 ところで、重要なのは、この暴露事件の前までに起きていたことである。

 図表1に示すように、ギリシャ国債(10年債)の利回りは、4~5%台だったのである。これは、後に述べるドイツやアメリカ国債との比較で、「正常」な利回りと評価し得るものだ。リーマンショックの影響すら受けていない。

 また、リスクの大きさを示すCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドも、高い水準ではない(http://www.bloomberg.com/quote/CGGB1U5:IND/chart)。要するに、市場は「ギリシャ国債が危険だ」というシグナルを発していなかったのである。

 ギリシャの隠ぺいが続いていたとしたら、いまに至るまでユーロ危機は発生していなかったのかもしれない。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄の「経済大転換論」

日本経済は今、戦後もっとも大きな転換期にさしかかっている。日本の成長を支えてきた自動車業界や電機業界などの製造業の衰退は著しく、人口減や高齢化も進む。日本経済の前提が大きく崩れている今、日本経済はどう転換すべきなのだろうか。野口悠紀雄氏が解説する。

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