「日本史上最もやばい人物」第1位:織田信長

加藤 最もやばい人物1位は誰でしょうか。

本郷 織田信長です。この人はやばい。日本史上で唯一、虐殺を行った人物ですから。

東大教授が教える「日本史上最もやばい人物」ベスト3

加藤 本願寺との戦いの中で行われた一向一揆殲滅や、比叡山延暦寺の焼き討ちですね。これらは、他の戦争とは全然性質が違うのでしょうか。

本郷 違いますね。信長は伊勢2万人、越前で1万2000人の民百姓を殺しています。今は当時の10倍くらいの人口であることを考えると、12万人殺しているという感覚です。

加藤 生かしておくと、あとでやられるということだったのでしょうか。

本郷 信長は歴史を劇的に動かした人物ですが、本当に虐殺が必要だったのかというのは問題ですよね。

 じつは、日本には基本的に虐殺ってないんです。僕が40年間歴史を勉強してきてわかったことの一つが、「日本史はぬるい」ということです。島国だからか、草食だからなのかわからないけど、虐殺はない。

 ぬるいのは別に悪いことじゃないのですが、劇的に変化するには外圧が必要なんです。その中で一人だけ虐殺をやった人物がいて、それが信長なんです。

加藤 世襲でなく能力で抜擢した家臣団を作ったり、桶狭間の戦いで少数精鋭で勝つエピソードがあったりと、歴史上のヒーローとして語られることも多い信長ですが、そうした見方もできるんですね。

『やばい日本史』は歴史上の人物の「すごい」面と「やばい」面を教えてくれますが、礼賛だけでなく、両面を知ることではじめて見えてくる歴史の面白さがありますね。

>>対談次回に続く

東大教授が教える「日本史上最もやばい人物」ベスト3本郷和人(ほんごう・かずと)
東京都出身。東京大学・同大学院で石井進氏・五味文彦氏に師事し日本中世史を学ぶ。大河ドラマ『平清盛』など、ドラマ、アニメ、漫画の時代考証にも携わっている。おもな著書に『新・中世王権論』『日本史のツボ』(ともに文藝春秋)、『戦いの日本史』(KADOKAWA)、『戦国武将の明暗』(新潮社)など。監修を務めた『東大教授がおしえる やばい日本史』は子どもから大人まで大きな人気となり、37万部突破のベストセラーとなっている。
加藤紀子(かとう・のりこ)
1973年京都市出まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、国際バカロレア、教育分野を中心に「NewsPicks」「プレジデントFamily」「ReseMom(リセマム)」「ダイヤモンド・オンライン」などさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。一男一女の母。膨大な資料と取材から「いま一番子どものためになること」をまとめた『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』が15万部を超える大きな話題となっている。