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週刊 上杉隆

放射能事故の実態をめぐる報道で
ようやく変わり始めた日本の空気感

上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]
【第16回】 2012年10月4日
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 福島の放射能事故の実態については初めから隠蔽の連続だった。

 それは県民の健康調査についても同じだ。思えば、昨年3月13日(事故後二日目)、原発からわずか3キロの地点にいたフォトジャーナリストの広河隆一さんと電話で話した時から何一つ変わっていないのだ。あの時、高線量の放射能が漏れていることを訴えても、政府も、行政も、東電も、そしてメディアもまともに動こうとしなかった。

 前例踏襲主義とそうあってほしくないという根拠のない願望が彼らの行動を縛ったのだ。

 いや、そればかりではない。現地で取材するジャーナリストたちが、現地から送ってくる恐ろしい取材結果を突きつけても、そうしたものには「適当だ」「デマだ」「インチキだ」「危険を煽る」という、それこそ未取材の適当な理由でもって目を瞑り、取材もしない記者たちが中心となって、誠実なジャーナリストたちの信頼を貶めようとする始末だったのだ。

 それは主にテレビ・新聞の記者たち、あるいはそこに巣食う心無い評論家や知識人たちによって作られた当時の日本に広がる哀しい空気であった。

 そうした状況は事故から一年経った今年4月、私がドイツで講演した時も変わらなかった。

 福島の住民の健康が危険にさらされている実例をいくつも挙げて、15ヵ所の講演と8つのメディアでのインタビューに答えた後も殺伐とした日本の空気は変わらなかった。

 ドイツでは、質問も反論も受けつけ、検証可能なようにデータのクレジットも明らかにして示し、それを公にしたにもかかわらず、「デマだ」とそれこそが根拠のない誹謗で私の発言をもみ消そうとしたのだ。それは徹底したものだった。

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上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

株式会社NO BORDER代表取締役。社団法人自由報道協会代表。元ジャーナリスト。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者、フリージャーナリストなどを経て現在に至る。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著) 『放課後ゴルフ倶楽部』 『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)  『有事対応コミュニケーション力』(共著) 『国家の恥 一億総洗脳化の真実』 『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』 『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』


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