主に株式投資についてだが、「長期投資」のあれこれについて論点整理しておきたい。

 (1)長期の株式投資が確定利付きの運用よりも絶対に儲かるというのは歴史的事実か?

そうではない。「長期」を具体的にどの期間とするかによるが、たとえば日本株なら、2002年の9月に日経平均株価が過去50年の移動平均と一致したことが報じられた。これは、50年間の積み立て投資で配当分しか儲かっていなかったということで、明らかにガッカリする結果だ。その後、03年には7603円の安値があり、さらに今年の3月には7021円の安値があった。他の先進国でも金融危機で「長期投資神話」は揺らいでいる。歴史は、「長期なら大丈夫」とは言ってくれない。

 (2)長期投資で、リスクは縮小するか?

 縮小しない。観測期間を長期化すると、平均化された「年率のリターン」が取る値は上下の幅が縮小するので、これをグラフで見せて「長期投資でリスクは縮小する」と説明するケースがしばしばあるが、不適切だ。『ウォール街のランダム・ウォーク』(バートン・マルキール著、井出正介訳、日本経済新聞社)など有名な本にも、投資期間が長期だとリスクが小さくなるので、投資家はより大きなリスクを取ることができるといった趣旨の明らかな間違いが載っている。同じデータを用いても、運用資産額の取りうる値の幅は拡大し、リスク自体は投資期間とともに拡大する。たとえば、長期のプット・オプションのプレミアム(=保険料)のほうが、より期間が短いもののプレミアムよりも大きいことを考えても当然だ。