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川の流れのように

楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]
【第26回】 2012年11月22日
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 「これを絶対に達成しようという目標をあらかじめ明確に決めて、ひたすらそれに向かって邁進する人がいる。私に言わせれば、そんなことしても仕方がない。世の中、ほとんどのことは自分の思い通りにならない。だから、自然な流れにひたすら身を任せて生きていく。これが自分の生き方だ。」

 出口治明さん(ライフネット生命社長)と話をしているとき、出口さんは目を輝かせてこのようなことをおっしゃった。僕は思わず膝を打った。考えてみると、僕もまったくそのように生きてきた。これからもそうしていこうと思っている。一言でいうと「川の流れのように」(もしくは「時の流れに身をまかせ」)。

 このところ、というかずいぶん前からそうかもしれないが、「夢をもって生きよう!」「夢をあきらめるな!」「あなたの夢は何か?!」というような、やたらに「夢」と「!」のつく生き方を(とくに若者に向かって)推奨する向きが多いような気がする。

 それに比べれば、僕はずいぶんユルユルと、わりと行き当たりばったりで生きてきた。「夢?ま、できるだけ自分がスキなことをしながら、自分のペースで毎日楽しく仕事を続けていければイイと思っているんですけど……。えー、体だけは大事にしてください。ドーモスイマセン」というのが小生の方針だ。「夢」や「!」がまるでないので、なんとなく自分の仕事姿勢を公言するのがはばかられるような気がしていた。そこへ持ってきて、「『目標絶対達成!』なんて、自分にとってはいちばんつまらん生き方だ」と出口さんがあっさりと言い切ってくれたものだから、常日頃の自分の考えをきっぱりと言語化してもらったような気がして、わが意を得たりという思いがした。

 ま、出口さんの場合は、川の流れのように生きてきた先に、還暦でライフネット生命というベンチャーを起業するということになったわけで、僕と同列に扱うのもちょっとアレではあるが、言いたいことは、仕事生活を生きていく姿勢として「川の流れのように」も大いにアリなのではないかということだ。

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楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]

1964年東京生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。2010年5月に発行した『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)は、本格経営書として異例のベストセラーとなり、「ビジネス書大賞2011」の大賞を受賞した。ツイッターアカウントは@kenkusunoki


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