東京湾岸にある東京電力の老朽火力発電所を、新型設備に更新する計画が動きだした。発電所という自社資産を切り離し、外部企業との共同でプロジェクトを進める東電改革の“本丸”に位置付けられたものだ。新規参入を目論む企業が意欲を見せる中、実際にふたを開けると、驚きの“罠”が仕掛けられていた。

 今夏、東京電力で火力発電を所管する火力部のエキスパートたちが、関係企業との折衝を、あわただしく行っていた。

 案件は、東京湾岸の老朽火力発電所のリプレース(設備更新)。実質国有化後に設置された「経営改革本部」の一大テーマになった新生東電の本丸事業である。

 東京湾岸には稼働年数が40年以上経過した火力発電所が6カ所もある。これら老朽火力は熱効率が4割弱と低く、最新鋭のLNG(液化天然ガス)火力にリプレースすることで、効率を2割近く上げることができる。

改革の「本丸」火力更新計画で<br />東電が密かに潜り込ませた“罠”東京電力の横浜火力発電所。リプレースの対象の一つになっている
Photo:PANA

 東電再生の「総合特別事業計画」には、東電が設備投資を抑制しながら、発電所を売却し、外部の企業と特定目的会社(SPC)を組織して自ら応札するなどの計画が詳細に記載されている。所管の経済産業省幹部も「資金不足の東電にとって利益になるだけでなく、新規参入を呼び込み、電力改革にもつながる取り組みだ」と意気込みを見せていた。

 火力部の動きは、改革意識が社員に浸透した証しと思われていた。

 ところが、淡い期待は絶望に変わる。火力部と関係企業の交渉では世にも奇妙な「条項」が示されていたのだ。

 「15年株式買い戻し条項」