米国疾病対策センター(CDC) の最新の報告では、接種後の心筋炎・心膜炎は、ファイザーとモデルナおしなべて100万接種あたり12.6人に発生。いずれも10代後半~20代(最頻は20歳前後)の男性、2回目接種から2日前後(~4日)に多く見られ、男性が女性の8倍以上となっている。

 データからも分かるように国内での発生率は、現時点では米国より大幅に低くなっている。ただ今後、若者への接種が進めば、発生率は米国に近づく可能性がある。国内でこれまでに2回接種が完了しているのは、64歳以下の合計でわずか66.4万人(内閣官房、7月7日時点)。接種後に心筋炎・心膜炎を発症しやすい10~20代にいたっては、微々たるものだからだ。

 それでも、ワクチン接種を受けるメリットを脅かすことにはならないだろう。米国CDCによれば、6月11日までに心筋炎や心膜炎の症状が確認された患者323人のうち、309人が入院後すでに退院しており、9人が入院中、14人は入院もしていなかった。

 国内で接種後に胸の痛みや呼吸困難、脈拍の乱れを感じた場合は、すぐに受診していただきたい。接種後に発症した場合にも、迅速に適切な治療を受けられれば、大事には至らずに済むはずだ。

接種後に起こる副反応
ファイザーとモデルナで差はあるのか?

 徐々に国内の世代の接種も進みつつある中で、「ファイザーとモデルナの違いが気になる」という声も聞く。

 両方とも同じmRNAワクチンだ。どちらも発症と感染をそれぞれ90%以上予防し、さまざまな変異株でも有効性が確認されつつある。心筋炎を含む安全性も、世界保健機関(WHO)の国際諮問委員会(GACVS)のお墨付きだ。
※2回接種の場合。1回接種でもある程度免疫はつくが、『Nature』誌によれば、インドから広まったデルタ株では2回完了しないと効果が期待できない。遅れてでも2回目の接種を受けてほしい。

 副反応に関しては、どちらのワクチンでも重篤なものは非常にまれだが、細かく見れば頻度に多少の違いはある。

 心筋炎・心膜炎だと、米国ではモデルナ接種者の方が高率で発生している。2回目接種後、ファイザーは100万接種当たり8人、モデルナは19.8人だ。国内でも、発生頻度はモデルナがやや高い。

 さらに、「モデルナ・アーム」という症状を聞いたことがあるかもしれない。モデルナ製ワクチンでまれに、接種部位の腫れがやや長びくものだ。接種から1週間以上たって腫れてきて、多くは4~5日(長いと3週間)で自然に治まる。

 およそ1万5000人に接種が行われた臨床試験(プラセボを含めると参加者3万人超)では、初回接種後に244人、2回目接種後に68人にモデルナ・アームが認められた。他の報告を複数見ても圧倒的に女性に多いが、入院が必要なほどの症例はない。