社会貢献とビジネスを両立させるしくみ、「Winの累乗」。連載第1回で、この新しいビジネスモデルのあり方を提唱したのが、たった「20円」で全世界20億人にリーチする活動を展開しているNPO、テーブル・フォー・ツー・インターナショナル(TFT)代表の小暮真久氏。
<自社を取り巻くすべてにおいて『Win』を作り、それをどんどん増やすことが、グローバルにビジネスを成功させることにつながる>という「Winの累乗」について、小暮氏が「本業を通して社会にいいことを成し遂げる」ための実践例を紹介します。
第4回となる今回は、いまいる顧客を越えて、コミュニティにWinを作ることのメリットと、そのために必要なことを、ユニクロを展開するファーストリテイリングが「全商品リサイクル活動」に込めた思いと狙いを紐解くことで考えます。

潜在顧客を越えて、
コミュニティにアプローチするという新しい動き

「潜在顧客にアプローチしよう」、そうビジネスの世界で言われるようになって、もう随分と経ちます。

 いま、この潜在顧客という言葉をさらに押し広げて、顧客が属するコミュニティにまでアプローチする、という企業が現れ始めています。今回紹介するユニクロは、まさにその最前線をいく企業と言えます。

 前回、Customer、すなわち顧客にいかにWinを作るかというお話をしましたが、「潜在顧客」という言葉がある通り、いま目の前にいる顧客だけに集中していたのではビジネスは広がっていきませんよね。「水平のインパクト」を意識しながら、顧客を取り巻く一般社会へもアプローチをしていくことが大切です。今回はこの一般社会――Community(コミュニティ)にWinを作るということを考えてみたいと思います。

 と、ここで皆さん不思議に思われるかもしれません。「潜在顧客」にWinを作ろうというのならわかるけど、なぜ「一般社会」「コミュニティ」にまでそれを広げなければならないの?と。たしかに一般社会にいるすべての人が顧客に転じることを見込めるわけではありませんし、明らかにターゲット外の人たちもいるでしょう。こうした人たちの間にWinを生みだしても、すぐにビジネスにつながるわけではありません。

 それでも僕は、企業が「将来の顧客を作るために」という目的を越えてコミュニティにWinを作ることには意義がある、と言いたい。社会的なベネフィットを提供することは、純粋にコミュニティに歓迎されることであり、その結果コミュニティに企業の「ファン」が増えることになる。短期的に顧客に転じることがなかったとしても、こうしたいわば「応援団」を持つことは企業にとってもベネフィットをもたらすからです。

 この、「コミュニティにWin」を本業と結び付けて計画的に実施し、効果をあげてWinの累乗を作り出している企業こそ、ユニクロなのです