社会貢献とビジネスを両立させるしくみ、「Winの累乗」。前回、この新しいビジネスモデルのあり方を提唱したのが、たった「20円」で全世界20億人にリーチする活動を展開しているNPO、テーブル・フォー・ツー・インターナショナル(TFT)代表の小暮真久氏。
<自社を取り巻くすべてにおいて『Win』を作り、それをどんどん増やすことが、グローバルにビジネスを成功させることにつながる>という「Winの累乗」について、小暮氏が「本業を通して社会にいいことを成し遂げる」ための実践例を紹介します。
第2回となる今回は、取り巻くすべてにWinを作る旅の出発点として、まずは働く自分、そして一緒に働く仲間にWinを作る方法を、リッツ・カールトンの「クレド」を通して考えます。
仕事でのやりがいは、どこから得られるのか?
毎朝、仕事に向かうとき、ワクワクした気持ちになっていますか?
そんな急に質問されても、と戸惑ってしまったかもしれませんが、この質問に胸を張ってイエス、と言える人ばかりではないのも、現実ではないでしょうか。
それでは、どんな要素が満たされていれば仕事は楽しく、やりがいを感じられるようなものになるのでしょうか?
もちろんこれは人によって違いがあると思います。でも僕の考えを先に言ってしまうと、シンプルかもしれませんが自分の仕事を通じて人(お客様)を幸せにする、楽しませる、役に立つという実感や充実感が得られることが、働く人のやりがいや幸せに直結してくるんじゃないかと思っています。
たとえば、自分が製造に関わった商品を感謝して使ってくれる人がいる、接客したお客さんが笑顔になる、提供したサービスをユーザーが楽しんで受け入れてくれる……。こうした経験をすると、「この仕事をやっていてよかったな」とやりがいを感じ、嬉しくなりますよね。もちろん、自分の仕事が収益に貢献している、というのもやりがいにつながることではありますが、「仕事の喜びとは何か?」を突き詰めて考えると、やっぱり「人の役に立っているという実感」が根っこにはあるんじゃないでしょうか。
ところがある世論調査では、まったく逆の結果が出ています。「日頃、社会の一員として、何か社会のために役に立ちたいと思っていますか?」という社会貢献意識を聞いたものがあります(注)。結果、「役に立ちたい」と答えた人の割合は、20代、30代でそれぞれ70%近い数字に。しかし残念なことに、そのうち「自分の職業を通じて」と答えた人の割合は、25%に過ぎませんでした。
自分の仕事を通じて人の役に立っている、という実感をもう一度取り戻すということ。それが、この回でお話しするCompany――「自社」にWinを作る、もっと具体的に言うと、自分自身や一緒に働く仲間がやりがいを感じ、ハッピーに仕事をするということです。
それでは、実際にはどうすれば実現できるのでしょう?
(注)内閣府 平成24年「社会意識に関する世論調査」より