社会貢献とビジネスを両立させるしくみ、「Winの累乗」。連載第1回で、この新しいビジネスモデルのあり方を提唱したのが、たった「20円」で全世界20億人にリーチする活動を展開しているNPO、テーブル・フォー・ツー・インターナショナル(TFT)代表の小暮真久氏。
<自社を取り巻くすべてにおいて『Win』を作り、それをどんどん増やすことが、グローバルにビジネスを成功させることにつながる>という「Winの累乗」について、小暮氏が「本業を通して社会にいいことを成し遂げる」ための実践例を紹介します。
第3回となる今回は、顧客・サービスの受け手にWinを作る製品の「設計」の仕方を、ミネラルウォーター「いろはす」の成功例を通して考えます。
「何を作っても売れない時代」は本当か?
「作れば売れる」大量生産・消費の時代は終わった――。
そんなふうに言われてすでに長い時間が経っています。さらに、最近では長引く不景気を反映してか、「何を作っても売れない時代」とさえ言われています。今の時代、Customer(顧客・サービスの受け手)にWinを作るのは一筋縄ではいかないよ、という声です。
でも、これって本当でしょうか?
ヒット商品の番付などを見ると、「あ、これ知ってる」という商品が並びますし、こんな時代でも売れているものは確実にある。たとえば、コカ・コーラ社の「いろはす」。ミネラルウォーターとしては後発ながら、発売されるやいなや加速度的にシェアを伸ばしました。
こうした状況を見ると、むしろ不景気であるがゆえに、消費者はサービスの提供側の論理で動かされることはなく、本当にほしいものが出てくるのを待っているんじゃないか――僕にはそう思えます。とすれば、顧客にWinを作るということは以前よりもはるかに難しくなっているのかもしれません。
商品開発に求められる3つのステップを見直す
こうなってくると、当然ながら従来の商品開発からの発想の転換が必要になってきます。では通常、商品やサービスの開発をする際、みなさんはどういう頭の使い方をするでしょう?もちろん企業によって違いはあると思いますが、大雑把なのを承知でまとめてみると、
1.顧客(のニーズ)を知る
2.製品・サービスの設計をする
3.顧客に届ける
という3つの段階を経て、製品・サービスは世に出されるのではないでしょうか。
このステップ自体は以前から変わらないとしても、顧客にWinが作りにくいと考えられる昨今の状況では、各ステップでの頭の使い方をどのように変えれば顧客のベネフィットを最大にし、Winを作り出していけるのか。
ここでは、「2.製品・サービスの設計をする」というところに絞って考えてみましょう。