たった「20円」で、先進国の肥満と、開発途上国の飢餓・栄養不足を同時に解決するビジネスモデルを打ち立て、全世界20億人にリーチする活動を展開しているNPO、テーブル・フォー・ツー・インターナショナル(TFT)。このTFTを率いるのが、元マッキンゼーのコンサルタントで、いまや全世界が注目する社会起業家である小暮真久氏です。
この度『社会をよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた』で成功しているNPOと企業の共通点を描き出した小暮氏が、「本業を通して社会にいいことを成し遂げる」ための実践例を紹介する新連載。
第1回の今回は、若者の仕事観の変化と、大塚製薬がインドネシアで成し遂げた「ポカリスエット」のマーケティングをヒントに、社会貢献とビジネスを両立させるしくみ「Winの累乗」を浮き彫りにします。
「社会にいいこと」と「ビジネス」を両立できる
仕事は本当にないのか?
「難民への衣料支援を行っていることを知って、『これをやりたい』と思ったのがユニクロを就職先に選んだ決め手」
「自分自身もアトピーに悩まされているので、化粧品会社に入って同じ悩みを持つ女性が安心して使える商品を開発したい」
「子どもの笑顔を見ることが大好きなので、食品会社に入って、ママと子どもに愛される食を届けたい」
僕のまわりで、こんな想いを抱いて就職先を決める若い人が増えています。
僕が代表を務めるNPO(非営利組織)のテーブル・フォー・ツー・インターナショナル(TFT)には「世界の食糧問題を何とかしたい!」との思いを持つメンバーが集い、その中には多くの大学生もインターンやボランティアとして活躍してくれています。
そんな彼らは今まさに就活真っただ中。社会人として先輩に当たる僕は、求められればアドバイスをし、時には愚痴を聞くこともあります。そんななかで、「僕らの時代の就活とずいぶん変わったなあ」と特に感じることがあります。それは志望動機。「なぜこの会社で働きたいと思うのか」という点です。
僕が就職活動をしていたころ――もう20年近くも前のことになりますが――、志望動機は初任給の額や昇進や昇給のスピード、海外駐在のチャンスがあるか、といった待遇に関することがほとんどでした。ところが今の学生に志望動機を聞くと、返ってくるのは冒頭のようなことばかり。
僕たちの世代が自分の利益を中心に考えていたのとは対照的に、彼らから聞こえてくるのは社会や他者への貢献です。言い方を変えると、仕事を通じて何か社会にいいことをしたい、と思っているのです。
ところが悲しいかな、そういう思いを叶えてくれそうな会社はなかなか見つからないというのも現状のようです。それは、「そういう会社はないですか?」というのも僕がよく受ける質問にも表れています。
そんな時、僕が何げなく彼らに話したところ、強烈に「刺さった」ある会社の話があります。それは「ポカリスエット」で有名な大塚製薬のお話です。