一方で、現在の運転本数で収まる限りは、利用者が増えても営業費は変わらないため、約1000億円の売り上げ増は利益に直結する。この結果、営業赤字は前年同期の約1783億円から約553億円へ、純損失は同約1554億円から約770億円へ、依然として赤字ながらも大幅に改善した。今後も利用が戻った分だけ利益も回復していくことになるだろう。

 営業利益をセグメント別に見ると、運輸業は約1675億円の赤字から約664億円の赤字と1000億円以上改善したほか、約64億円の赤字だった不動産・ホテル業は約103億円の営業黒字に転換した。

 鉄道の利用状況を詳しく見てみたい。同社の月次情報によると、第1四半期の鉄道営業収入は2019年度同期比で、定期収入が74.8%、定期外収入が42.6%、合計では51.5%だった。2020年度第4四半期(1~3月)は定期収入が74.8%、定期外収入が41.3%、合計で50.1%だったので、今年に入ってからはほぼ同水準の利用が続いていると言えるだろう。

 ちなみに、これらは2020年度第2四半期(7~9月)の定期収入63.6%、定期外収入40.3%、合計46.9%という数字を上回っている。この時、東京には感染拡大の「第2波」が訪れており、帰省の中止などが呼びかけられたものの、緊急事態宣言は発出されなかった。

 だが今年に入ってからは、昨年末から年始にかけての「第3波」、ゴールデンウイーク前後の「第4波」の影響で、ほとんどの期間、緊急事態宣言が発出されていた。それにもかかわらず、利用が大きく減少していないということは、感染対策の要とされる人流の抑制が思うように進んでいない実情を示している。

 他方、JR東日本は今年5月に発表した2020年度決算の中で、第1四半期の定期外収入は在来線がコロナ前の約70%、新幹線が40%弱まで、第2四半期にかけて在来線、新幹線とも80%以上に回復するとの業績見通しを発表していた。しかし、第1四半期の実績値は、新幹線が約34%(2019年度同期比)、在来線が約57%(同)にとどまっている。

 現在の感染状況では第2四半期中の終息は見通せず、年内あるいは今年度いっぱい、影響が残る可能性も否定できない。同社は第1四半期の業績について「単体の運輸収入が対計画約 200 億円の下振れとなった」と説明しており、370億円の営業利益と250億円の純利益を見込む2021年度通期の業績予想は変更しないとしているものの、達成は極めて厳しいものとなりそうだ。