経営混乱以後、赤字に転落した日産だが、足元では業績改善が進んでいる。先の22年3月期第1四半期決算の発表で21年度通期の連結最終損益が600億円の黒字(前期は4486億円の赤字)になる見通しへ上方修正した。営業損益も1500億円の黒字(前期は1506億円の赤字)に転換する見通しとなった。

 日産の前期決算発表時点では、今期の営業損益はゼロ、最終損益は600億円の赤字と予想していたので、日産は営業損益、最終損益はともに3期ぶりの黒字転換となる。

 7月28日の第1四半期決算発表会見で内田社長は「構造改革が着実に進んでいる」と久しぶりに胸を張って強調した。4~6月の日産の業績は米国や中国で新車販売が好調に推移し、懸案の米国での収益力回復への取り組みも功を奏しつつある。

 一方で懸念材料もある。コロナ禍が長引く中、深刻を極めている半導体供給不足だ。ほかの自動車メーカーも同様だが、日産も当初の生産計画に対して4~9月に50万台を減産する。

 日産は21年末までに12車種の新型車を投入して復活への道筋をつける計画だが、この新車投入も工場生産の状況いかんで遅れることにもなる。実際に日産EV(電動自動車)戦略の“目玉”であるクロスオーバーEVの新型車「アリア」の発売も年央から今冬に遅らせることを発表している。

 日産にとって“脱ゴーン”への経営再建は緒に就いたばかりだ。西川前社長から19年12月に引き継いだ内田社長にとって、ブランド回復・業績回復は大命題。“背水の陣”である内田体制が2期連続の赤字で無配転落が続けば、日産に43%出資する筆頭株主の仏ルノーからの圧力も強まる。ルノーは日産の業績次第で経営が左右される。ルノーにとって日産の稼ぐ力は欠かせない。