デジタル庁#番外編Photo:JIJI

菅義偉政権の「目玉政策」のデジタル庁は、菅首相が突如として退陣を表明したことではしごを外された。霞が関の抵抗を抑えて菅内閣発足から1年という異例のスピードで発足した “最強組織”は、強力な後ろ盾を失って漂流を始めた。特集『ITゼネコンの巣窟 デジタル庁』の番外編で、混迷の内幕を探った。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

「寝耳に水」の菅首相退陣表明で
強力な支えを失ったデジタル庁

「そのニュースは本当なんですか?」

 9月3日、正午過ぎ。平井卓也デジタル相は「寝耳の水」の知らせに思わず記者に逆質問した。9月1日にデジタル庁が発足。その2日後に開かれた初めての閣議後会見での最初の質問が、菅義偉首相が自民党総裁選に不出馬を表明したことへの見解だった。

 デジタル庁は、菅首相にとって“目玉政策”だ。霞が関の省庁からIT政策の権限と予算を奪うという荒業で、政権発足からわずか1年で立ち上げられたのは「官房長官時代から官僚ににらみを利かせてきた菅さんでなければ実現しなかった」(中央官庁幹部)。

 だが、鳴り物入りの新官庁は、発足からわずか2日後に首相が退陣する事態に陥った。

 退陣表明したばかりの菅首相は3日午後、首相官邸で、平井デジタル相と、「デジタル監」に就任した石倉洋子氏、赤石浩一デジタル審議官と面会して「(政策を)前に進めるように」とだけ告げたという。

 デジタル庁は、旧IT基本法を20年ぶりに見直したデジタル改革関連法という強力な法律を裏付けとして発足した組織。大きな裁量と権限を持つ“最強組織”という触れ込みであるだけに、既得権を奪われる側の他の霞が関官庁や大手ベンダーらからの抵抗は大きい。改革を進めるには、菅官邸主導の強力なサポートが頼みの綱となっていた。

 平井デジタル相は「政治状況に左右されず、どなたの手によっても前に進む」と言うが、菅首相という後ろ盾を失った新組織が荒波の船出となったことだけは間違いない。

 果たして、デジタル庁はこの難局に立ち向かえるだけの陣容をそろえているのか。新組織の改革を主導するのは誰なのか。官僚出身者と民間企業出身者を合わせた「600人混合体制」の全容を明らかにしていこう。