定年後の転職にまつわる誤解
「就職口なんてない」は、ウソ!

 一方、定年後に再雇用でも起業でもなく、他の会社に転職するという選択肢はどうだろうか。筆者は定年後半年間の再雇用を経て独立起業したので、転職の経験はない。定年時に同業他社からのお誘いはあったが、それまでやっていたのと同じ業界で同じ仕事をするのが嫌だったので、丁重にお断りして起業した。

 実は起業と同様、定年後の転職や再就職についても大きな誤解が存在する。それは「60歳にもなった人間に就職口なんかあるわけないだろう」という誤解だ。

 確かに日本の企業においては、会社を中途退職して転職する場合、年齢的に30代までがせいぜいで、40歳を過ぎてからの転職は極めて難しいとされている。

 それはなぜかというと、この考え方の根底にあるのは最近流行の言葉で言えば「メンバーシップ型雇用」を前提としているからだろう。

 単なる業務スキルだけではなく、その組織独特のルールや社風になじめるのは若い人の方が良いのは間違いない。したがって必ずしも新卒でなくても比較的若い年代であれば良いが、定年まで勤め上げた中高年社員を採用して一から教えようという会社など、まずないと考えていいだろう。

 ましてや世の中の風潮としては、「定年前後の働かないおじさん」なんか引き受けるのはできれば御免被りたいという空気が強いことも確かである。したがって、定年後の再就職は困難と考えるのは無理のない話だ。