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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

問題は農業のみにあらず。時代に遅れた
各種制度の「内なる国際化」を進めよ!

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第21回】 2012年11月26日
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周辺国の変化についていけず
硬直化する日本のシステム

 多くの面で優れているはずと言われる日本のシステムだが、いま明らかに硬直化が進んでいる。人口が増加し、経済が右肩上がりで伸びているかぎりは、変化の糊シロも大きい。旧来の制度をある程度残しておいても、新しい分野がどんどん伸びていく。そうした活力ある部分を多くの国民が観察できるので、より好ましい制度にシフトしていくことができるのだ。

 しかし、人口の減少が始まり、日本経済の硬直化が始まった。日本が変わったというよりも、周りの国が大きく変化したのに、日本がその変化についていけないのだ。アジアのどこに行っても、「日本はどうしてしまったのか」という質問を受けることが多い。日本びいきの人であるほど、日本のこの体たらくを残念に思っているようだ。

前回とりあげた農業がその典型だ。いま議論すべきは、農業を残すのか潰すのかというような時代錯誤の論点ではない。農業は残すに決まっている。重要なのは、将来が見えない今の制度にこだわって衰退を受け入れるのか、それともこの機会に大胆な改革を試みて、若者が農業の未来に期待を持てるような姿に変えていくのかという問題なのだ。

 農業だけが例外というわけではない。医療や介護でも、教育でも、金融システムでも、制度を硬直化させてはいけない。社会を海外に開いていくことで日本の制度をより好ましい形に変えていく──そうした気概が求められているのだ。TPP(環太平洋経済連携協定)の論議も、そうした国の形に関わる大きな議論でなくてはいけない。

世界に誇る医療制度も
足下では崩壊が起きている

 日本の医療制度は素晴らしい──そう医療関係者は主張する。先進国の中では最も低い医療費で抑えている。国民の平均寿命は世界最長あるいはそれに近い水準である。国民皆保険でフリーアクセスが確保されており、国民はいつでもどの病院にでも行ける。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

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