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伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「TPP」が日本の農業をダメにするのではない!
「いまの農政」こそが日本の農業をダメにする

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第20回】 2012年11月19日
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農業者はTPPに反対か?

 TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉に参加するかどうかという問題は、国論を大きく二分している。多くの農業関係者が反対の声をあげ、東京で大きな反対集会を開き、霞が関をデモした。TPPに反対する著作が書店で平積みになり、ベストセラー入りもしている。

 それでも、経済学者でも政治学者でも、私が知る限り、尊敬に値する研究者の大半はTPPへの参加が日本にとっては必要であると言う。新聞社が行うアンケートでも、TPPへの参加に賛成する人が過半数であるようだ(日経新聞〈2011年10月23日〉時事通信〈12年7月13日〉朝日新聞〈12年8月28日〉)。

 農業関係者はTPPに反対であるというイメージが強いようだが、これも新聞社のアンケートによると、農業者のなかにもTPP参加に賛成の人が意外に多いということがわかった(日経新聞〈12年7月27日〉)。私が関係しているプロ農家の集まりでは、大半の人がTPPの交渉に前向きの姿勢を示している。

 ある有名なコメ農家の方は次のように言っていた。「今の日本の農政は問題が多すぎる。兼業農家の保護が強すぎて、このままの状態を続けていたら日本の農業はダメになる。TPPへの参加をきっかけにして日本の農政が変わることを期待したい」と。

 プロ農家の方々と付き合うとよくわかることだが、農家をひとくくりでまとめることはできない。農業を主な仕事としているのがプロ農家(専業農家)。それに対して、収入の過半が役所や工場での労働によるもので、農業を片手間にやっているのが兼業農家。同じ農家でもまったく違った存在である。

 将来の日本の食料生産や産業としての農業を重視するなら、プロ農家を支援しなくてはいけない。しかし、目先の「農民票」を重視するなら、兼業農家を無視できない。日本全体の農業にとって好ましいことと、政治の動きの間に大きな乖離がある。

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伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

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