次に海域内には豊かな漁場があり、そこでの漁獲量は世界の1割超になる。さらに海底には膨大な原油と天然ガスが眠っているとみられており、南沙諸島の海底油田の埋蔵量は20億バレルとも2000億バレルとも推測されている。

 つまり、南シナ海を支配することによる利益は膨大なものであるため、中国は周辺国と対立してでも自国の支配下に置こうと考えているのだ。

国際裁判所の判決を無視し
人工島を軍事施設化する中国

 中国が南シナ海の領有権に言及しはじめたのは意外と古く、1950年頃から「九段線」という独自の境界線を設定し、南シナ海のほぼ全域に主権や権益が及ぶと主張してきた。

 これに対抗しているのがベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾だ。これらの国・地域は中国同様に自らの領有権を訴え、一歩も引こうとしない。

 ベトナムは1974年と1988年に中国と武力衝突している。さらに2012年にベトナムが南沙諸島と西沙諸島を自国領とする海洋法を成立させると、中国も海南省に南沙諸島と西沙諸島を含む「三沙市」を設置するなど、両国はさまざまな駆け引きを繰り広げているのだ。