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【特別寄稿】東京理科大学大学院イノベーションレビュー

責任と覚悟を持って技術を判断できる
マネジャー層の厚みが企業の実力

伊丹敬之 [東京理科大学大学院イノベーション研究科 教授]
【第2回】 2012年11月29日
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次の時代に備えて、どのような技術を選択すべきか

 世の中が変化している以上、あらゆる企業において次の時代に備えた技術開発は欠かせません。その土壌づくりやタネまきを怠れば、いずれ報復を受けることになる。このことについては大方の経営者の同意を得られると思いますが、問題はどのような技術を選ぶかです。

 将来を見据えて技術を取捨選択する能力、言い換えれば技術の目利き力を日本企業はどの程度意識的に育ててきたでしょうか。かつては長期的な視点に立ち、技術の発掘・育成プロセスを上手に操っていた企業が、いつの間にかその機能を衰弱させてしまいました。 

東京理科大学教授 イノベーション研究科長
伊丹敬之

 理由は様々でしょう。創業者世代の引退は重要かもしれませんが、ここで注目したいのは技術選択の仕組みです。以下では、「ステージ‐ゲート・プロセス」について説明します。技術経営の陥穽の1つとして、象徴的な例だと考えるからです。

 ステージ‐ゲート・プロセスとは研究開発の成功確率を高めるために、アイデアが事業化に向かう過程でいくつかの“関所”を設け、各段階でチェックするという研究開発マネジメント手法です。もともとは北米生まれの手法ですが、日本でも多くの企業が採用しています(*1)。

 関所を通過するためには、一定の基準をクリアしなければなりません。経営戦略との整合性や市場性、競合に対する優位性などを勘案し、各部門の代表者が出席する会議で「この技術は50点だからダメ」「これは70点だから、次のステージに進んでよし」などとやるわけです。公平で客観的な仕組みのようにも見えますが、そこがクセモノです。

*1 そのメリットとデメリットについては、『技術経営の常識のウソ』(伊丹敬之/東京理科大学MOT研究会編著、日本経済新聞出版社刊)で1章を割いて分析しているので、興味のある方はご一読ください。1つだけ付記しておきますが、この章を執筆したのはMOT専攻の卒業生です。
 
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伊丹敬之 [東京理科大学大学院イノベーション研究科 教授]

1969年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、72年カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了・PhD。一橋大学商学部専任講師、助教授などを経て、85年教授。一橋大学商学部長、同大学大学院商学研究科教授などを歴任後、2008年より現職。IT戦略本部、バイオテクノロジー戦略会議など政府関係委員を多数歴任。2005年11月紫綬褒章を受章。著書に『経営学入門』(共著、日本経済新聞社)、『経営戦略の論理』(日本経済新聞社)、『よき経営者の姿』(日本経済新聞出版社)、『経営を見る眼』(東洋経済新報社)、『イノベーションを興す』(日本経済新聞出版社)『本田宗一郎―やってみもせんで、何がわかる』 (ミネルヴァ書房)など。■東京理科大学大学院イノベーション研究科


【特別寄稿】東京理科大学大学院イノベーションレビュー

あれほど強かった日本企業がなぜ――。半導体、エレクトロニクス産業の現状を見て、そんな思いを抱く人は多いだろう。この疑問を解くカギが技術経営(MOT)である。日本企業復活の出発点は、過去の失敗を正しく認識し、そこから学ぶ姿勢を持ち続けることだろう。今回、その学びを先導してくれるのが、東京理科大学大学院イノベーション研究科研究科長の伊丹敬之教授である。伊丹教授の誌上講義を、3回シリーズでお届けする。

「【特別寄稿】東京理科大学大学院イノベーションレビュー」

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