減速が鮮明化する中国経済
電力不足に資材調達不足も

 中国の7~9月期の実質GDP成長率は、前年同期比で4.9%と4~6月期から大きく減速した。国慶節の連休中の国内旅行者数は2019年比で29.9%減少し、国家統計局が発表した10月の製造業PMIは9月に続いて50を下回った。不動産開発やインフラ整備など、投資に依存した経済成長は限界を迎えている。

 景気減速の背景には、いくつかの重要なファクターがある。

 まず、不動産市況の悪化だ。昨年夏、共産党政権は「3つのレッドライン」と呼ばれる不動産企業向けの融資規制強化策を実施し、不動産バブルの鎮静化に本腰を入れた。その結果、恒大集団(エバーグランデ)など不動産会社の資金繰りは悪化し、デフォルト懸念が高まっている。住宅価格の伸び率も鈍化した。不動産税の試験導入も加わり、GDPの25%程度を占めるといわれる不動産セクターへの逆風が強まっている。

 二つ目が電力不足だ。脱炭素を背景に、世界的に化石燃料分野での投資が減少している。加えて、コロナの発生源を巡り豪州との関係が悪化し、一時、中国は豪州産石炭の輸入を止めた。さらに、感染再拡大で国境が封鎖されたことや、世界的な供給制約で中国の石炭輸入が落ち込み、電源構成の6割を占める石炭火力発電が減少した。一時は信号が止まるほどの電力不足だった。

 現在、共産党政権による価格統制の強化などによって石炭価格の上昇は一服し、家庭向けの停電も解消されつつあるようだ。しかし、大口の電力需要者である繊維や非鉄金属などの企業は、依然として電力不足に直面していると聞く。

 三つ目がコロナ感染再拡大だ。感染者の来園判明によって上海のディズニーランドが一時休園し入園者が閉じ込められたように、共産党政権の「ゼロ・コロナ対策」は非常に厳格だ。それは飲食、宿泊、交通などサービス業に悪影響を及ぼす。

 それに加えて、中国が資材を調達するベトナムやミャンマーなどの感染の実態は楽観できず、生産活動に必要な資材調達に支障が生じているとみられる。