「日本は何がしたいのか」
「もう、いいよ」
「どうせまた同じことの繰り返しなんだから」
「新しい変化が起こるとは到底思えない」
ここ数日間、ハーバード大学、マサチュッセツ工科大学、タフツ大学の三大学で、日本の政治・経済を専門とする、あるいは東アジアの国際関係から日本の外交的、安全保障的プレゼンスをウォッチしている複数の教授と議論してきた。「来る衆院選についてどう思うか」と尋ねると、一言目に体全身の力が抜けたような、落胆した面持ちでこれらの言葉が返ってきた。
この中にはアメリカを代表するような長年のジャパンウォッチャーや、アメリカ人の東アジア観に影響力を持つような教授もいる。そんな彼らの目にも、「もう日本は何がしたいのか分からない」と言わせてしまうほど、日本は迷走しているように、外の世界からは見える。
「中国と喧嘩して何になるんだ。なぜ原発か脱原発かという両極端な議論しかできないんだ。自らの国力と背丈にあった戦略を立てよう、そのための人材を育てようという方向に力が働かないのはなぜなんだ。もう私にも分からないよ」
なかには日本を突き放すような勢いで声を荒げる教授もいた。
学生たちに同じ質問をすると、
「あ、そうなんですか」
「いまの首相はどなたでしたっけ?」
「ミスター・コイズミはとっても面白い政治家です」
「私は宮本武蔵が好きです」
など、昨今の政局とはあまり関係のない答えばかりを返してきた。国際関係・外交で有名なタフツ・フレッチャースクールの講師によると、「ここには世界中から学生が集まっていますが、とにかく日本の政治経済への興味が薄れています。言語も含めて、中国とは対称的です。学生たちが日本に対して関心のあるテーマはもうアニメくらいしかないですね。」
ハーバード大学で大学院生の研究分野・活動に詳しい行政担当の先生によると、「今さら日本の政治や経済を勉強し、7~10年もかけてPh.D.(博士号)をとろうなんていう学生はほとんどいないですね。中途半端にやってもしょうがないということで、大学や教授サイドも生徒たちに勧めないんです。」