3年3ヵ月前、国民の圧倒的な支持を受けて政権交代を実現させた民主党。当初、70%を誇っていた内閣支持率は現在、10%台にまで下落している。民主党が掲げたマニフェストは子ども手当てや高校授業料無償化など、確かに一部は実行されたが、最も国民が望んだ無駄遣いの排除、政治主導による国家運営など多くが実現しないままに終わった。
なぜ国民があれほど期待した政権交代は、ことごとく裏切られる結果となったのか。そして、なぜ3年前に待望された二大政党制は根付かず、いま小政党が乱立してしまったのか。菅政権時代に総務大臣を務め、民主党政権の実態をよく知る片山善博・慶応義塾大学法学部教授が、民主党が期待を裏切ってしまった理由と、今回の総選挙で何をよりどころに投票すればよいか、迷える有権者に向けたヒントを語る。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
「政治主導」は一部では発揮
が、政権与党として力量不足だった民主党
――大きな期待を背負って誕生した民主党政権に対して、今では裏切られたという感情を持つ国民も少なくありません。この3年数ヵ月の民主党政権をどう評価しますか。
1974年東京大学法学部卒業後、旧自治省(現総務省)入省。99年鳥取県知事、再選後2007年退任。10年菅内閣で総務大臣、野田内閣発足に伴い退任し、現職。
Photo by Masato Kato
一言でいえば、国民が期待していたような政権を切り盛りする力量が、民主党政権にはなかった、ということだろう。これは民主党だけに限った問題ではないが、政権を担えるだけの人材が不足しており、かつ、これまで野党であった民主党の経験不足は否めない。
さらに国民が期待をしていた「政治主導」についてもなかなか実現に至らなかったのは、理念やノウハウが民主党の政治家たちの間で、共有されていなかったからだ。あるいは、当初は理念を持っていたとしても、政権与党になった途端、「官僚の言うことに乗っかった方が楽だ」と考えた政治家も少なくなかった。
その代表的な存在が野田佳彦首相だろう。彼は、民主党政権誕生直後から財務副大臣になり、2010年6月の菅内閣発足に伴い財務大臣になったが、完全に財務官僚に取り込まれてしまっていた。「ミイラ取りがミイラになった」と言うところだろうか。もしかすると野田さんは最初から「ミイラ取り」になるつもりもなく、ただ権力の“ピラミッド”に入ろうとしただけだったのかもしれない。
しかしその一方で、民主党政権によって改革が進んだ部分がある。一見すると進んでいないように見える「地域主権改革」だ。例えば、国が地方自治体に支出する補助金の「一括交付金化」である。菅政権では60点、野田政権では70点くらいにまで改革が進んだといっていい。