また、ホンダもホンダとて、業績が順風満帆ではない。特に四輪車の収益改善は急務だ。

 前述の通り自工会会長職の準備として神子柴氏は専務からホンダ会長に昇格し、これまで自工会副会長として活動を行っていた。だが、今年4月に三部敏宏氏が新社長に就任し、来期の自工会の副会長職も三部社長に交代する。結果、「ホンダ会長」の役割も変化せざるを得ない。そのため、“ポスト章男会長”にホンダは誰を位置づけるのかも注目されている。

 順当に考えれば、豊田会長の3期目が終了する24年5月以降、その次はホンダが会長を送り出すことになる。

 ホンダは技術屋出身の社長は業界活動のトップには就かないとの不文律があったが、エンジン部隊出身である三部社長が自工会副会長に就任したことをポスト章男会長の布石と読む向きもある。少なくとも、強力なリーダーシップのある豊田会長の次の自工会会長は、脱炭素の方向が本格化してくる時期なだけに、一筋縄ではいかない重責となるだろう。

 いずれにしても豊田会長の自工会組織改革や難局への危機意識が浸透し「会員各社や事務局の圧倒的な当事者意識が共有されて」(自工会関係者)決まった3期目の続投だ。日本車メーカーの一致団結体制での難局打開、世界での日本自動車産業の勝ち残りへ、豊田会長のリーダーシップ、手腕が大いに期待されるところとなっている。

トヨタ社長交代の見方も浮上
大本命は初の「外国人社長」

 一方で、自工会会長職を6年連続で務める豊田会長の、トヨタ自動車社長としてのトヨタ内部での力学変化もあり得る。

 端的に言えば、社長交代の可能性である。09年6月にトヨタ自動車社長に就任以来、12年間在任してきた豊田社長は今年6月の株主総会で珍しく12年間の総括をしたのだ。

「意思ある情熱と行動で現場に近い社長であり続けた」とし、社長12年間の変化として「時価総額は約33兆円とプラス20兆円以上、株価は2.8倍になった」と嵐の船出となった社長就任からの成果を強調した。