企画制作会議はプロの視点からのアドバイスとともに

 プロジェクトメンバーのすべての学生にとって、正規出版物の制作に携わることは初めての経験だ。並製上製・スピン・カラーチャート……といった専門用語のほか、16ページ単位で製本されることを理解してディスカッションに参加していく姿も見られた。「Aさんの考えはこうだけど、わたしはこう思う。Bさんはどう?」といったように、オンラインでのやりとりでは成し得ない距離感と空気感の中で議論が前向きに進んでいくさまは傍から見ていて心地よいものだった。

 メンバー考案の表紙デザインなど、企画制作会議でなされた結論を、次の会議でデザイナーの青木氏が現物として提示し、それをもとに討議が重ねられ、結論に至るというプロセスが繰り返されていく。

「ミーティングの場では、各人のこだわりや意思を他のメンバーが丁寧に拾い上げている姿が印象的でした。ひとつの決定までに時間がかかることもありましたが、さまざまな視座から検証し、良い結論に集約できていたようです」(青木氏)

 青木氏とともに編集担当の村松千絵氏(クリーシー)が制作メンバーの自律を尊重しながら寄り添い、プロの視点から適切な知見を与えていったこともプロジェクトを円滑に進めたカギだった。

「手帳にこだわりのある学生たちだったので、ともすると、個人的な、自分たちの好みで案を決定しがちになるのでは?とはじめは心配しました。ですから、手帳のコンセプトを意識することや就活生が使いたくなるポイントは何か?を常に考えるように声がけし、『なぜ、この仕様にしたのか』をメンバーで共有できるようにしました」(村松氏)

「無難であることが良い」とする学生の多かったことが意外だったとも村松氏は語る。

「無難であることがいまの学生たちの志向であれば、それは尊重すべきだと思う一方、没個性になり、若者らしいフレッシュさが損なわれるのではないかと危惧しましたが、それも杞憂に終わりました」(村松氏)