世界がEVシフトに
「前向き」な理由

 今、世界的に合意が取れているのは2050年までに世界全体でカーボンニュートラル、つまり産業活動や生活から排出されるCO2などの温室効果ガスと植物などが消費するCO2の総量が均衡する状態を達成する、というゴールです。なぜその目標が重要かというと、それを達成しなければ、産業革命以来続く地球の平均気温の上昇を努力目標である1.5度以内に抑え込めないからです。

 地球温暖化については、過去20年間でいろいろな議論が行われてきました。当初は「地球温暖化など起きていない」といったレベルの反論が見られましたが、現在では地球温暖化が進行していることは、ほぼほぼ世界的なコンセンサスになっています。

 そして科学者の予測のうち「地球の平均気温が産業革命から2度上昇した時点で、自然のバランスが崩れ、地球はもう後戻りができない滅亡へと向かう」という見解が、世界の首脳の間で大きな力を持っています。

 その根拠から、世界の首脳は2050年のカーボンニュートラル目標に合意をしているのですが、問題はそこに至る中間点の2030年代で、そこに各国の国益をめぐる綱引きが繰り広げられています。

 この国益をシンプルに分類すれば、欧州と中国は意欲的な温室効果ガス削減策を進め、アメリカと日本が国益のために消極的な対応を取ろうとしています。