カフェオーナーが危惧する「コーヒー2050年問題」の脅威、生産量が半分に?Photo:PIXTA

朝起きて、お湯を沸かしてポタポタとコーヒーを入れる人もいれば、お店でコーヒーを注文して飲む人もいる。普段何気なく飲んでいる1杯のコーヒー。コロナを機にお家でコーヒーを入れて飲む人も増えたのではないだろうか。最近では、「コーヒー価格の高騰」といったニュースを目にすることも増えている。1杯のコーヒーが手元に届くまで意外と多くの人や物が関わっており、日本の裏側ともつながっている。コーヒーには、地球規模のあらゆる課題が含まれており、それを知るだけでも、普段の何気ない1杯が心を満たす1杯に変わるかもしれない。(BUCKLE COFFEEオーナー 石山俊太郎)

生産地・消費地両方に要因が
コーヒー価格高騰の2つの理由

 コーヒーの生産地は、赤道を挟んで北緯25度から南緯25度の帯状に広がっており、ブラジルやグアテマラのような中南米、インドネシアやパプア・ニューギニアといったアジア・オセアニア、エチオピアやルワンダなどがあるアフリカと、幅広い地域で生産されている。この赤道に沿った帯状の生産地一体は、世界では「コーヒーベルト」と呼ばれている。私が代表を務めるBUCKLE COFFEEの名前の由来は、ベルトのバックル(金具)からきている。このコーヒーベルト(生産地)と消費者をつなぐ強い結い目(バックル)になりたい。そんな思いから名付けた。今回の記事も、生産地と皆さんの結い目の一助となればと思い、書いている。

 話が少しそれたが、昨今コーヒー価格が高騰している要因には、生産地での高騰要因と、消費地での高騰要因がある。私の住んでいた東南アジアに位置する島国の東ティモールでの今期の事例では、加工代金(脱穀や豆の選別など)の高騰や、コーヒー資材(麻袋・グレインプロバッグ)価格の高騰、燃料価格の高騰により日本までのコンテナ運送量も約2倍になるなどの影響が出ている。これらが、原材料の価格を押し上げるのだ。

 消費地では、エスプレッソマシンをはじめとする機械の値段がここ数年上がり続けているだけでなく、人件費・光熱費・地代家賃・梱包材・資材の値段も上がっている。これらは、われわれが購入する1杯のコーヒーや焙煎豆の価格に関与してくる。例えば、2019年に約200万円だった人気イタリア製エスプレッソマシンが、21年には同機種で約235万円にまで上がっている(一部は円安の関係もある)。

 また、コーヒー豆は世界的に消費が増えている傾向がある。高品質なコーヒー豆に至っては、日本の企業が買い負けをするといった事態も出てきている。お茶を飲む文化が根強い中国では、ここ数年でコーヒーを飲む文化が根付いてきていることもあり、コーヒー買い付け時の存在感が高まってきている。それ以外にも、コーヒー生産量世界上位4カ国のブラジル、ベトナム、コロンビア、インドネシアの国々でも、2015年と2020年の消費量を比較すると、約5~20%増えている (全日本コーヒー協会調査データより比較)。このように、中国や生産地での世界的なコーヒー消費量が拡大している一方で、実はコーヒーの栽培適地が減少することが予測されている。

※グレインプロバッグとは虫の侵入やカビ、酸化から穀物を守るために使用される袋。麻袋の内袋として高品質コーヒー生豆に使用されることが多い。