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米企業でも株主より社会の利益を優先できる!?
「ベネフィット・コーポレーション」とは何か

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第225回】 2012年12月19日
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 アメリカでは近年、若い世代が「社会起業家」となるケースがよく見られる。親の世代のようにただ会社に働かされることに疑問を持ち、もっと社会に役立つような仕事をしたいと感じる若者が増えているからである。また、企業の中にも売り上げの何パーセントかをフィランソロピー(社会貢献)に使うことを定めるところも増えてきた。社会への関心は、明らかに高まっているのだ。

 ただ、そうしたケースとベネフィット・コーポレーションとの違いは、ベネフィット・コーポレーションがたとえ利益を追求しなくても、株主らに訴えられることがないということである。それこそ、四半期ごとの業績にイチャモンをつける株主がいても、彼らの言うなりになる必要はない。もっと長期的な企業の目的を追究すればいいのである。一方、非営利組織ならば資金を集める方法や報酬などにさまざまな制限がつくが、ベネフィット・コーポレーションにはそれがない。

代表格はアウトドア用品の「パタゴニア」

 ベネフィット・コーポレーションになった有名企業に、アウトドア用品のパタゴニアがある。同社は、素材調達などについてもサステイナビリティーを重視し、環境問題にも敏感だ。また社員の厚生の面では、世界のトップクラスをいく働きやすい環境を与えている。

 同社の創業者のイヴォン・シュイナードは、企業が環境に与える悪影響をコストとして内部化するような会計方法があれば、「安いものを求める消費者心理が、健全で公正な世のなかを維持するビジネス手法と完全に合致」するようになるはずだとも述べている。同社は、2012年に同法を制定したカリフォルニア州で最初のベネフィット・コーポレーションになった。

 また、バーモント州の小麦粉メーカーのキング・アーサー・フラワー社は、220年以上の歴史を持つ有名企業。かつてよりサステイナブルな商品の製造や社員による共同経営を行ってきたが、2007年に全米で最初のベネフィット・コーポレーションのひとつになった。

 それ以外にも、オーガニック洗剤メーカーとして人気のあるセブンス・ジェネレーション、アイスクリーム・メーカーのジェン&ベリー、話題の手芸コミュニティーサイト、エッツィーもベネフィット・コーポレーションになっている。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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