だがそれは、それぞれの文化にふさわしい答え方をそれぞれがしているだけで、「それほど満足していない」と答える日本人が「非常に満足している」と答える欧米人よりも自己肯定感が低いとは言えない。そこのところを考慮せずに、表面上の数字を取り上げて日本人は自己肯定感が低いから問題だというのは、勘違いも甚だしい。

榎本博明『自己肯定感という呪縛』青春出版社榎本博明『自己肯定感という呪縛』青春出版社

 実際、意識化されていない自尊感情(自己肯定感)を測定した心理学者山口勧たちの実験では、日本人とアメリカ人の自尊感情に差はみられなかった。

 つまり、日本人の心には謙遜の美徳が深く根づいているため、意識調査では欧米人と比べて自己肯定感が著しく低くなるものの、潜在意識を測定してみると、欧米人と同じくらいの自己肯定感を保っているというわけである。

 そうであれば、国際比較調査で日本人の自己肯定感が低いという結果が出たとしても、何も問題ないはずだ。そんなことは気にせず、日本の文化にふさわしく謙虚に振る舞っていればよい。それで社会に受け入れられていれば、自然に気持ちは安定し、潜在的な自己肯定感は徐々に高まっていく。べつに急いで自己肯定感を高めようと焦ることはないのだ。