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生活保護のリアル みわよしこ

趣味のモノ購入、夢のための貯蓄は許される?
生活保護受給者に許される「最低生活費」はいくらか

――政策ウォッチ編・第8回

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【政策ウォッチ編・第8回】 2013年1月4日
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2012年12月26日、安倍内閣が成立した。生活保護基準切り下げを目指す動きも、それに対抗する動きも、今後ますます激しくなりそうだ。

こんな時期だからこそ、一度、基本に立ち返って考えてみようではないか。

生活保護制度が保障する「最低限度の生活」とは、いったい何なのだろうか?

「最低限度の生活」に
必要なものは何か

神奈川県立保健福祉大学。自然豊かな広大な敷地に、美しい学舎が建っている

 貧困問題・社会政策を研究している岩永理恵さん(35歳・神奈川県立保健福祉大学講師)は、2008年から、「生活最低限」の研究を行なっている。2008年から2010年は、東京都立大学(当時)時代の恩師の1人である岩田正美氏(現・日本女子大学)の研究プロジェクトの一員として。2009年からは、自分自身の研究プロジェクトとして、大学の後輩でもある堅田香緒里氏(現・埼玉県立大学)とともに。

 現在の研究プロジェクトの名称は「『流動社会』における生活最低限の研究:『合意に基づく』基準生計費策定プロジェクト」である。と言われても、根が理系の筆者には、正直なところ、内容のイメージが湧かない。その研究は、どういうものなのだろうか?

 「基本的な生活に必要なものは、どういうものなのか、考える研究です。今は、どなたかが実際に暮らしているお住まいに行って、お住まいの中にあるアイテムを全部数え上げ、そのアイテムリストについて議論する形で研究をしています」(岩永さん)

 調査の場として選んでいるのは、東京都三鷹市・埼玉県さいたま市である。いずれも、都心に通勤する人が多く住んでいる街である。岩永さんたちは、それらの街の賃貸住宅に住む単身者の住まいを訪問し、紙1枚に至るまで、すべてのアイテムを数え上げる。そして、膨大なリストを作る。そのリストの検討を通して、人間の基本的な生活とは何かを明らかにするのが、研究の目的だ。もちろん、その「基本的な生活」に必要な費用は、生活保護法でいうところの最低生活費とリンクする。

 もちろん、人の暮らしぶりは1人ひとり異なる。持っているアイテムの種類にも数にも、人によって、大変な違いがある。CDなど趣味のグッズを大量に所有している人もいれば、洋服を大量に所有している人もいる……と書きながら、筆者はふと、自分の所有物が気になり、工作机の引き出しを開けてみた。幼少時から電子工作を愛好してきた筆者は、未だに工作用の机を持っている。その引き出しには、ハンダゴテが3本、テスターが5個入っている。この1年ほどの筆者はほとんど、工作机やツール類に触れる機会を作れていない。でも、捨てたくない。自分のアイデンティティの象徴のようなものだからだ。

「夢を買う」は宝くじだけじゃない
ある男性の、ささやかな願い

 都内某市の、ある単身男性の住まいで、岩永さんたちが調査を行なっていた時のことだ。

 男性は、企業に勤務している。収入は「ワーキングプア」ほど低くはないが、決して高くはない。仕事は、極めて多忙だ。平日、住まいに滞在できる時間は、7~8時間程度。帰って、シャワーを浴びて、寝て、起きて、身支度をして出勤する。それだけのための住まいだ。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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