自民党の政権復帰は、霞が関の力学構造にも及んでいる。「直勝内閣」と言われたほど野田政権を操っていた財務省は逆風にさらされ、「消費税増税」さえ危うい。
日銀は、財務省と密かに握った「次期総裁は元財務次官の武藤(敏郎)氏」という人事案が宙に浮いた。原発事故で窮地に立つ経産省は「援軍来たる」と活気づいている。「国土強靭化」という積極財政が踊り出し、財政再建は後退するだろう。2013年は波乱含みの幕開けだ。円安・株高へと経済の潮目も変わった。「好転」なのか「破局」への道なのか。政府への信任が問われる年になる。
実質的な日銀による国債引き受け
「大胆なマクロ政策の転換」を叫ぶ安倍政権の経済政策は、年度の上半期に、その真贋が見えてくるだろう。注目点は「4~6月の景気」「金利上昇」「国債発行高」である。
例えばこんな事態も起こるかもしれない。
4月×日、日銀の白川総裁が退任、金融緩和を積極的に行う新総裁が登場した。首相の期待に沿い大胆な「買いオペ」で市場に資金を流し始めた。30兆円から始めた「買い入れ基金」は6月に100兆円を突破した。
この裏にはもう一つの事情があった。1月の大型補正予算から始まった財政の大盤振る舞いで政府は財政資金の不足が深刻になっていた。国債消化を円滑にするため、日銀が金融機関の保有する国債を、一層、買い上げなければならなくなったのである。「買いオペ」は銀行が保有する国債を日銀が買い取ることで、市場に日銀券(通貨)が供給される。日銀には国債が溜まる。日銀はオペを通じて実質的な国債の「日銀引き受け」を始めたのである。
「財政再建」を目指す財務省にとって、日銀に国債を買ってもらうことは財政規律を歪め、あってはならない事態だった。だが財務官僚から異論は出ない。消費税増税の条件に「名目成長率3%」の高いハードルがあるため「増税にこぎ着けるまで無理な財政出動にも耐えるしかない」という事情がある。「景気が回復しない限り増税はできない」という政権の意向を無視できず、資金を国債に頼る財政出動→景気対策に歩調を合わせた。