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「えっ? 図書館って企業が運営できるの?」
あなたの街で民営図書館が密かに増え続ける理由

筒井健二
2013年1月10日
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いかなる目的で制度を導入するのか? 問題点が浮上した際に、住民の立場からそれを解決できるのか?──制度導入に際して、私たちが事前に知っておくべきことは多い

 2013年4月から佐賀県武雄市は、同市立図書館の運営をカルチュア・コンビニエンス・クラブ(「TSUTAYA」運営企業)に委託すると発表した。図書館が果たしていた従来の業務内容、つまり図書や視聴覚資料の貸し出しの他、雑誌や文具の販売、カフェの設置などを計画しているという。

 「えっ、図書館って民間企業が運営できるの?」と不思議に思う方もいるかもしれない。実は2003年に地方自治法が改正されたことで、公立施設の管理を民間業者が請け負うことが可能になった。これがいわゆる「指定管理者制度」である。

 公立図書館に加えて、スポーツ施設や駐車場などの基盤施設、美術館・博物館、さらには病院や介護施設など社会福祉施設の運営・管理を、民間事業者が行なうケースが挙げられる。

 もともと公立施設の民間委託導入は、昭和50年代から始まっている。その動きを本格化・活発化させたのが、小泉政権による「官から民」の大キャンペーンだ。郵政民営化を旗印に、さまざまな公共事業が民間企業による運営方式にその形態を変えていった。

 言うまでもなく、公共施設の民間運営には賛否両論がある。運営に関する専門性の向上や経費削減などのメリットが挙げられると同時に、税金によって建設された公共施設を営利団体である民間企業が請け負うことに疑問の声も上がっている。独立採算制に近い運営を求められる施設も多く、利用料金をとらざるを得ない可能性も懸念される。

 もちろん、マイナス面ばかりではない。数ある導入メリットの最たるものが、資金調達とサービス提供のノウハウだろう。世界で最も厳しい評価の目を持つ日本の消費者の要求に応えるため、企業のサービスノウハウは非常に高いレベルにまで磨かれている。これは激しい市場競争の中で積み重ねてきた努力の賜物だ。

 また、「官」にとって資金を投入して運営する施設はいわゆる“ハコモノ”であり、完成した瞬間から運営コストという負担がのしかかる。その点「民」にとっての施設建設は投資である。収益を生む資産であり、つくってから運営方針を決めるようなお役所仕事とは根本的に考え方が異なる。サービスの向上や周辺地域の住民や学校を巻き込んだユニークな企画など、地域住民の生涯学習の場として大いに活用され続けるべきだ。

 指定管理者制度を導入し、一定の成功を納めている図書館も多い。育児や障害、病気などで来館が困難な利用者のために、図書の宅配サービスを始めた兵庫県の町立図書館。学校の図書館を活用していた生徒たちは、近い将来確実に街の図書館を利用するだろうという考えから、学校と図書館の連携を強めた北海道の市立図書館など、指定管理者制度を導入したことで、利用者のニーズを的確に把握できるようになった。

 総務省の発表によれば、2012年4月時点で指定管理者制度が導入されている公共施設は全国に7万3476施設。そのうち約3割の2万4384施設で、株式会社やNPO法人、学校法人、医療法人などの民間企業が指定管理者となっている。

 2009年に行われた前回調査から3454施設(3.9%)増加していることから、普段利用している図書館が、ある日突然同制度を導入することもあり得る。いや、“もうすでに”かもしれない。

 指定管理者制度が導入された当時、「官から民へ」というのは構造改革の標語だった。「官」というネガティブイメージを払拭するために、「民」という対案表現が使われた、ワンフレーズ型政治における一種のパフォーマンスとも言えよう。

 公共施設の民間運営が、国や自治体政治が抱える問題点のすり替えであってはならない。「官」がはらむ問題点は、そのまま「民」の持つ問題点にもなり得るということを、私たちは強く意識する必要がある。

(筒井健二/5時から作家塾(R)


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