威勢のいい政権交代の余韻の中で、2013年がスタートした。これから日本の国は、どこに向かっていくのだろう。年の始まりに、まだ先行きの見えない私たちの行く末を暗示するような話を紹介したい。
当連載には、とくに年末以降、読者から数多くの体験談やご感想等をいただいている。その中でも、ある母親のメールが胸に突き刺さった。
バブル崩壊後、公務員として見てきた
仕事に就けない若者の厳しい現実
<私は2年前まで公務員として32年間勤めておりました。リーマンショックで、長男が就活に失敗し、ネットでいろいろ検索するうちに、日本の現状を目の当たりにして、新卒で就職できないと、正社員での雇用の困難さを初めて知りました……>
こんな書き出しで、憂いの思いを書き綴ってくださったのは、関東地方に住む50歳代前半のA子さんだ。いまは、家からほとんど外出できずに引きこもり状態にあるという。
長年、医療保険に携わる仕事をしてきた。
しかし、窓口での相談や高額医療費の手続きをしてきて目の当たりにしたのは、いまの若者たちが置かれている厳しい現実だった。
<私は仕事がら、バブルがはじけた時(以来)、就職できず、自殺をしてしまった若者を何人も見てきました>
<就活に失敗して引きこもり、心療内科にかかって入退院を繰り返し、飛び降り自殺をしてしまった息子さん。いまもデイケアを受診して、社会復帰できない子。いじめに遭い、不登校になり、病院の院内で勉強していた女の子。うつ病で長年薬を手放せない方、仕事に行き詰まり、自殺された方…>
30年以上前、A子さんが就職した頃とはあまりにも世の中が変わってしまっていた。痛感するのは、派遣やフリーターといわれる人たちが増えたことだ。それまでは、若者が仕事を選り好みしているのだと思ってきた。
それだけに余計、息子が就活に失敗したときは、いろいろなことが頭を駆け巡ったという。