iDeCoは投資ではなく
「年金制度」だ

 まず、そもそもの話であるが、iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」である。

 言うまでもなく確定拠出年金にはもうひとつ、「企業型」もある。「企業型」の加入者は今年2月末時点で約750万人で、iDeCoの3倍以上もある。こちらの方が圧倒的に多い。

 どちらも確定拠出年金制度ではあるものの、「企業型」の本質は会社の退職給付制度であり、退職金・企業年金の変形と言ってもよいだろう。

 会社の制度であるから、掛け金を負担するのは原則として会社である。これに対してiDeCoは国民年金に自助努力で上乗せする制度であり、言わば公的年金を補完するものと言ってもよい。

 すなわち、企業型もiDeCoもどちらもその目的は、老後の生活に備える「年金制度」なのである。たまたまそのための運用の中身として投資信託が入っているため、「投資」のための制度とみられがちだが、投資は老後資金作りのひとつの手法にすぎない。事実、企業型の場合、全てが投資信託で運用されているわけではない。半分近くは預金などの元本確保型商品である。

 制度が始まった当初、iDeCoを利用できるのは自営業やフリーランスなどの1号被保険者およびサラリーマンで、企業年金のない会社に勤める人だけであった。自営業の場合は厚生年金に入れないため、老後の備えが乏しくなりがちだ。企業年金の無い会社員の場合も、老後資金の面で心もとないと考えられるため、それを自助努力で補完する制度としてスタートしたのがiDeCoなのだ。