フォードやGMに部品納入!宇都宮の「老舗ばねメーカー」が海外で認められたワケ村田発條における「ばね」の生産風景

1933年からばねを作り続け、現在は「自動車用ばね」に特化している老舗メーカーの村田発條。本社は栃木県宇都宮市にあり、単体での従業員数は約300人と、決して大きな会社とはいえない。にもかかわらず、米国、中国、メキシコに工場を持ち、海外納入先にはゼネラルモーターズ(GM)やフォードなどが名を連ねる。宇都宮発の中小メーカーは、どのようにして海外進出を成功させたのか。(ルポライター 吉村克己)

車の乗り心地を決めるばねで
市場シェア国内30%、海外15%

 ばね(スプリング)は“産業のコメ”と言えるほど、あらゆる工業製品に使われている。それだけに、ばねメーカーは世の中に数多く存在する。

 そんなばね業界において、自動車部品に特化し、世界の自動車産業を支えるばねを作り続けている老舗国産メーカーが、栃木県宇都宮市にある村田発條だ。

 単体での従業員数は約300人と、決して大きな会社とはいえないが、エンジンの動力をタイヤに伝えるクラッチ内部で自動車の乗り心地を確保するための「ダンパースプリング」では国内シェア30%、世界シェア15%を占める。

 エンジンの吸排気に使用される「バルブスプリング」も同社の主要製品で、特に4トン以上の普通トラックやバス向けの国内シェアは100%と独占状態だ。

 自動車1台には約4000種類のばねが使われていると言われるが、村田発條は国内において月産3500種、4000万個を生産し、90%超は大手自動車部品メーカーに納入している。
    
 主な取引先には、国内では三菱自動車やSUBARU、海外の納入先ではゼネラルモーターズ(GM)やフォードなどが名を連ねる。米国、中国、メキシコにも工場を持ち、連結売上高(147億円)のうち海外売上高比率は、30%に達している(2021年度)。

 宇都宮発の中小メーカーは、ばね業界において、なぜここまで圧倒的な存在になれたのか。