『南方週末』の記事改ざん事件が語る
中国を揺るがす民主化運動のうねり

 中国・広東省にあるリベラル系週刊誌『南方週末』の記事に関する、中国共産党・宣伝局からの圧力による記事改ざん問題は、今後の中国経済のリスク要因を浮き彫りにしている。中国では、いずれ民主化運動のうねりが高まることは避けられず、それが社会全体に大きな混乱をもたらすと、経済活動にもマイナスの要因として働くことになるからだ。

 もともと中国の主なメディアは、中国共産党の一般大衆への宣伝を担う機能が多かった。現在でも、人民日報や国営の新華社通信はそうした色彩の強いメディアとしての役割を担っている。

 ところが、改革開放の機運の高まりや市場型経済の進展によって、自由に発言できるメディアに対する人々の要求が高まっていることもあり、リベラル系と呼ばれるメディアが形成されるようになった。その1つが、今回の事件の当事者となった『南方週末』だ。

 『南方週末』は、2009年に米国のオバマ大統領が訪中した際、民衆向けのメッセージを託したメディアとしても注目された。また、2012年にドイツのメルケル首相が同社を訪問し、意見交換を行ないたいとの希望を表明したことでも知られる。それだけ中国内外から注目を集めるリベラル系のメディアであるため、同紙に対する共産党宣伝部からの監視の目は厳しかった。

 年初に同紙記事が一方的に改ざんされたことで、同社内外から強い不満の声が上がった。特にインターネットを通して、かなり自由で厳しい批判が流れており、共産党宣伝部との対立関係が一段と鮮明化した。

 民主化を求める民衆の声を全て消し去ることは、中国政府の当局をもってしても不可能だ。問題は、今後、中国政府がこの問題に対してどのような対応を行なうかだ。対応を誤ると、社会全体に大きな混乱が生じ、経済活動を阻害することにもなりかねない。その場合には、世界経済の足を引っ張ることが懸念される。