京都企業の血脈#16Photo by Reiji Murai

村田製作所が“非創業家”の社長に交代してから2年余り。過去最高益を更新し、営業利益率20%を超える最強部品メーカーへと成長した。その強さの秘密について、村田恒夫会長は「誰がやっても社長が務まること」と言い切る。特集京都企業の血脈(全18回)の#16では、現社長を指名した際の裏話や自律的な組織づくりに難渋した経緯などについて、余すところなく語ってもらった。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

アップルビジネスを拡大した
非創業家の中島氏が頭角を現した訳

――京セラ、日本電産、村田製作所。京都には偉大な創業者を持つ企業が多いです。

 創業者が大企業にした会社は、しっかりした社是や企業風土を持っている会社が多いですよね。そうした京都企業の多くはベンチャーから発展してきました。京セラ、日本電産、オムロン、ローム……。任天堂は老舗ですが、創業家の方がファミコンで第二の創業を果たしていて、やはりベンチャーといえます。そのベンチャー企業故のチャレンジ精神、創業者がつくった企業風土を上手に引き継いでいるのが京都企業の特徴だと思います。

――村田では、創業者の村田昭さん、2代目の泰隆さん、それぞれの影響は、今の会社にどう残っていますか。

 創業者は「不思議な石ころ」と表現したセラミックの可能性を追求して商品と事業の幅を広げました。そして、早くから海外市場に打って出たというチャレンジ精神がありました。2代目は海外の大学出身というのもあって、会社をグローバル企業に育てようと、創業者以上に海外市場へのアプローチが強くて、海外の優良企業を意識して経営してきたと思います。

――そして2007年に村田会長が3代目社長になって、今に至っています。

 いや、3代目は特になんにもしてないんですけど(笑)。

――そんなわけがありません。

 まあ、携帯電話がスマートフォンに替わる通信市場にうまく乗ってきました。スマホの市場の軸がしっかりしていたので成長できたということでしょうかね。

 うちの会社では、それぞれの部署で権限移譲が進んでいて各部門の長が生き生きと、それぞれが自分たちのありたい姿を描いて事業運営していくスタイルが定着しています。

 だから、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の成長も急な需要拡大に対応できる組織体制だったといえるでしょう。それも担当事業部門が自らビジョンを描いて、戦略的に設備投資をして人材を用意していたから伸びた。そうした自律性が、会社の中でかなり形成されてきたんじゃないかと思います。

――そうした自律した組織の中で、米アップルのiPhoneをはじめとするスマホ向けの通信部品事業を拡大した中島規巨さんが創業家以外から初めて社長になりました。

 結構な放任主義ではありましたが。携帯電話の市場の拡大余地が大きくて、そこで高周波部品を担当していた中島さんが事業の幅を広げていったのは、彼の手腕が大きいですね。

07年から13年間の社長在任中に、村田を日本有数の高収益企業に成長させた村田会長。その強さの秘密は「トップダウン型」のリーダーシップではなく、経営の権限移譲が進んだ事業部門の現場が自ら自律的に成長する組織づくりにあった。次ページでは、そうした組織づくりに難渋した経験や、初の非創業家の社長を後継指名するに至った「裏側」について、余すところなく語ってもらった。