いわゆるソーシャルゲームが台頭する中、ヒット商品の不足や超円高で苦戦を強いられていた任天堂が復調の兆しを見せ始めた。昨年11月に発売された「とびだせ どうぶつの森」(ニンテンドー3DS用、4800円)は、わずか2ヵ月で売上本数が270万本(パッケージ版210万本、ダウンロード版60万本)(※)を突破。ニンテンドー3DS本体の売り上げも牽引し、国内市場規模1000万台を達成した。ゲーム専用機不要論も飛び交う中で、任天堂はどのようにコンテンツビジネスを展開していくのか。同社の岩田聡社長に聞いた。(取材・文/ジャーナリスト 石島照代)

任天堂の社長が最近、
朝起きてすぐにしていること

昔楽しんだゲームの最新作を、親になっても安心して<br />子どもに与えてもらえる、そんなビジネスがしたい<br />――岩田 聡・任天堂社長インタビューいわた・さとる
1959年北海道札幌市生まれ。東京工業大学工学部情報工学科卒。81年HAL研究所入社、92年社長。2000年任天堂入社、経営企画室室長などを経て、02年現職。Photo by Teruyo Ishijima

――昨年12月に発売した新型家庭用ゲーム機「Wii U」の手応えはいかがですか。

 まだまだこれからではありますが、いいスタートを切れたとは思います。

――Wii Uは2年前の「E3 2011」で初めて発表されたわけですが、その時の反応はあまり芳しくありませんでした。

 確かに、反応がもうひとつ我々の期待通りにはなりませんでした。ですが、一般論として、新しい商品の価値を一瞬で理解してもらうことは難しい。その観点からは、Wii UはWiiのときよりもむしろ2004年に発売した「ニンテンドーDS」のときに近い覚悟でやらないといけない、と思っています。

 DSのことを思い出すと、発表した瞬間「2画面にするってどういうこと? 任天堂はおかしくなっちゃったんじゃないの?」という反応から始まりました。発売後しばらくして、特に「脳を鍛える大人のDSトレーニング」が出てしばらくしてからですが、「こういうことだったのか」と売れていった。それから、今度はゲームらしいタイトルでもDSで売れるタイトルが出てきて、DSを中心としたプラットフォームビジネスが回るようになりました。でもその変化が世界中で起きるまで、だいたい2年近くかかっている。ですので、短期的なことに一喜一憂しないように、心がけています。

(※)パッケージ版本数はメディアクリエイト調べ。ダウンロード版本数は任天堂発表(2013年1月6日現在)。