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任天堂はなぜソーシャルゲームをやらないのか(上)
関係者が見据える「バブル市場」の不確定要因と未来図

石島照代 [ジャーナリスト]
【第24回】 2012年1月6日
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ソーシャルゲームに参入すれば
任天堂の収益は本当に改善するのか?

 昨年のゲーム業界は、ディー・エヌ・エーやグリーなどが手がける、いわゆる「ソーシャルゲーム」ビジネスの好調で救われた年となった。不調に喘いでいた、スクウェア・エニックス、バンダイナムコ、コナミなど大手ソフトメーカーは、ソーシャルゲームビジネスで軒並み復調しつつある。

 一方、そのソーシャルゲームビジネスをやらない任天堂は、「ニンテンドー3DS」ビジネス関連の不調と円高による為替差損のダブルパンチ状況であったが、年末ギリギリになって、3DSの販売台数が「ニンテンドーDS」や「Wii」より10週も早く400万台を超えたというニュースも飛び込んできた。

 このように、勢いを取り戻しつつある任天堂ではあるが、それでも「任天堂は自社ハードをあきらめて(もしくは自社ハードに限定せず)、儲かるソーシャルゲームビジネスに参入せよ」という趣旨の発言は、相変わらずネット上で散見される。

 任天堂の収益は、巷で言われているとおり、ソーシャルゲームビジネスに参入すれば、本当に改善するのだろうか。それならば、なぜ任天堂はやらないのだろうか。今回は、前後編にわたってその理由を考えてみたい。

 ソーシャルゲームの人気は凄まじい。主な業界関連企業の2011年度3月期第2四半期決算を見ると、ソーシャルゲーム人気は大手ソフトメーカーの収益を軒並み改善させただけでなく、「モバゲー」でおなじみのディー・エヌ・エーの売上をも業界関係企業のトップ5に食い込ませた。

 売上高上位4社のうち、トップの任天堂を除いた3社は、玩具ビジネス(バンダイナムコ、2位)、パチンコ(セガサミー、3位)やスポーツジム(コナミ、4位)などのゲーム以外の大規模ビジネスがあるので、そこに食い込むのはなかなか難しい。

 その中での5位ランクインは賞賛に値する。ゲーム業界の雄である任天堂も、米国で野球チーム「シアトル・マリナーズ」を持っているくらいなのだから、ソーシャルゲーム業界の雄であるディー・エヌ・エーも、野球チームの1つくらい持ってもおかしくはないだろう。

 しかし、ここまでソーシャルゲームが儲かるのであれば、なぜ任天堂は手を出さないのだろう。アイテム課金システムを導入するという任天堂の発表を受けて、一部報道が「任天堂がソーシャルゲームのようなアイテム課金型ゲームを投入予定」と報じると、任天堂が自社ホームページ上で即座に否定するという念の入れ様だ。

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石島照代 [ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

 


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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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