党大会の最終盤、胡錦濤は数人に腕を取られて「退席させられた」

 とはいえ筆者自身は、幕が開けばタネが明かされる党や政府人事の事前予想に、もともとあまり関心はなかった。22日も用事を終えてから夕刻になって初めてスマホを開き、ニュースに目を走らせようとした程度だった。

 だが、そこにびっくり仰天のニュースが流れていた。というのは、この日午前の党大会で、習近平の前任者である胡錦濤が、列席する関係者やメディアの目の前で、人民大会堂の舞台上にしつらえられた主席台から「退席させられた」というのである。

 慌ててニュースサイトを開いて動画でその様子を確認した上で背景を理解しようとしたが、「退席させられた」というニュースと「退席した」というニュースが並列している。明らかにどこのサイトもこの前代未聞の出来事をどう理解すべきか混乱していた。「させられた」とするタイトルを掲げた記事でも内容では「胡錦濤・前主席が途中、大会職員二人に導かれて退席した」と事実しか述べておらず、その「させられた」という言葉遣いも感情的なもので、確固たる裏付けは取れていないようだった。

 翌日になってもそれ以上の詳細解説は流れてこず、中国政治を伝える報道は、誰がナントカ委員に選ばれ、それはどういう意味を持つのかといった、恒例の(そして王道の?)中国政治分析に戻ってしまっていた。

 しかし、筆者の脳裏には力ない足取りで連れ去られる胡錦濤の姿がこびり付いており、「一体何が起こったのか?」ばかりが気になっていた。

新華社は「胡錦濤は体調不良だった」とツイート

 中国の国有通信社・新華社は当日夜、ツイッターで「胡錦濤前主席は体調不良を押して会議に出席したが、不調を訴えたため、職員が別の部屋に案内して休養させた」とする同社記者の説明を投稿している。

 確かに、筆者も16日に始まった党大会の開幕式に久しぶりに姿を現した胡錦濤と温家宝・前首相の姿に驚いた。二人とも髪の毛が真っ白になっていたからだ。特に胡錦濤は任期中、大きなイベントの前には必ず髪を染めているといわれ、いつもポマードのようなものでがっちりと固めた黒髪が、ある意味トレードマークになっていたくらいで、その落差に驚いた。