デンマーク人女性が受けた人生最高の教育
その名前は「The Kaospilots」。 デンマークの第二の都市、オーフスに位置する3年制のビジネスデザインスクールです。Ode magazineが2007年に“型破りな名前だが、世界で最も刺激的なビジネススクール“と評し、Business weekでは2008年に世界のベストデザインスクールとして紹介されています。型破りな名前は、「カオス的な混乱した状況でもパイロットのようにナビゲートできる人材を育てる」ことに由来します。
The Kaospilotsは、ビジネススクールとデザインスクールの考えを統合したビジネスデザインスクールです。ビジネススクールとして、与えられた期間でリソースを活用しながら目標を達成するためのプロジェクトマネージメントと社会の課題に答えるため組織が持つ可能性を広げる組織開発について学びます。
デザインスクールの観点からは、ユーザーセンターの質の高い経験を創造するエクスピアリエンスデザインと、より良いサービス、商品、人、組織に対して明確なアイデンティティを創るブランドデザインを学びます。1学年40名未満の少人数制でLearning by doing(実行することで学ぶ)のスタイルで、理論やツールを学んだら、実行する機会が与えられます。
ビジネスとデザインの文化の両方を取り入れたユニークな学校ですが、もともと私が学びたかったソーシャルイノベーションはビジネススクールでも教えている内容です。なぜビジネススクールではなくデザインスクールの観点を持ったThe Kaospilotsを選んだのか、それは積極的に失敗を体験できる環境の違いにあります。
従来のビジネススクールは個人が頭でソーシャルイノベーションを理解するところだと思います。多くの文献を読み、教授や卒業生など様々な観点から聞いた話を頭の中で整理し、成功と失敗のパターンを想定して学びます。グループワークによる実践型の授業がデザインスクールに比べて少ない現状を考慮すると、他人と一緒に失敗する経験はあまりないでしょう。
一方、デザインスクールではソーシャルイノベーションがどういったものかを他人と一緒に体感することに重点を置いています。文献や講義から学んだ知識を使って実際に手を動かしてチームで物を作り、体験することで成功と失敗のパターンを実践的に学びます。デザインスクールでは「失敗」が新しい解決策や機会を生み出すきっかけになるという考えがあるので、積極的に失敗することを奨励します。
ソーシャルイノベーションとは、絶望的な状況に陥っても希望を捨てずにどん底から這い上がり、再度挑戦することで達成できることだと思います。創造する経験を通して、失敗を「機会」として捉える思考が身につくThe Kaospilotsなら将来クリエイティビティを使ってソーシャルイノベーションを起こすことができるのではないかと考えたのです。
では、そんなThe Kaospilotsで過ごす3年間とはどのようなものなのでしょうか。ここで少し紹介したいと思います。まず、1年目からプライベートセクター、パブリックセクターやNGOなど異なる実社会のクライアントと最低5つのプロジェクトを個人やグループで取り組みます。その間にリーダーシップや発想力など様々なスキルを身につけ、クリエイティブなプロジェクトをデザインするためのツールや手法を学ぶのです。
2年目は、対クライアントのプロセスコンサルタントとして必要な知識やパフォーマンスを学びます。アウトポストと呼ばれるプログラムでは、世界の中でも“クリエイティブが熱い都市”にチームメイトと約3ヵ月間滞在します。現地のクライアントが抱える課題に取り組み、慣れない新しい環境でもプロジェクトをナビゲートする術を学ぶのです。
3年目は、取り組みたい分野のプロジェクトと場所を自分で選び、学校の規定にあったプロジェクトに取り組みます。この間に起業する人もいれば、海外のパートナーを見つけてプロジェクトを始める人もいます。卒業後のネクストステップが明確になるようにプログラムがデザインされているのです。
The Kaospilotsでは生徒が自分自身と向き合い、よく知ることができる機会を多く提供しています。なぜなら、リーダーシップやクリエイティビティを強化するためにどうすれば良いのか、という問題に対して答えは一つではないからです。人は誰もがユニークな存在であり、ある一つの方法がその人に合うとは限りません。
チームメイトや講師との対話やフィードバックなど、個人の性格、強みや弱みを理解する機会を設けることでその人に合ったリーダーシップや創造力を身につけることができます。