新規事業失敗の法則写真はイメージです Photo:PIXTA

読者の方から、新規事業開発について「うちの会社がヤバいんです」というお悩みをいただいた。新しい事業の開発に失敗する企業もあれば、成功する企業もある。失敗する/成功する企業それぞれの特徴を知れば、成功に生かせるのではないだろうか。これまでの取材を思い出しながら、失敗の法則について考えてみた。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

新しいことをしているフリ、形だけのビジネスコンテスト

「これってどう思いますか?」

 先日、読者の方から「自社のこと」としてこんな話を教えていただいた。「突然、社内で新規事業のアイデアコンテストが開かれて、採用された社員には数千円が進呈された」というケースである。

 筆者の率直な感想としては、新しいことをしているフリとか、経営陣の無策を社員に押しつけているだけのように思えてしまった。別に、賞金が安いからではない。この話を詳しく聞いていくと、新規事業開発のよくある失敗要因がいくつか集約されていたからだ。

【失敗要因その1】大事なところが社員に伝えられていない

 失敗要因と感じた一つ目は、採用されたアイデアをどう展開していくのか、ビジョンや戦略、追加投資の有無などについて、社員に何一つ伝えられていなかったことだ。

「なぜ新規事業に取り組むのか」「誰に、どんな価値を提供したいのか」といった軸がないまま、アイデアやイノベーションだけ追い求めても、迷ったときに最善の選択ができない。もはやアイデアコンテストを開催することが目的化してしまい、「我が社は現場の声を反映するフラットで今どきの会社」という言い訳にされる様子が目に浮かんだ。