W杯「真の勝者」は中国!出場できずもカタール中でチャイナマネー席巻鄭州裕通客車で行われた電気自動車の出発式。741台がカタールへ輸送された(2021年12月、中国・河南省鄭州市) Photo:China News Service/gettyimages

4年に一度の世界的イベント「FIFAワールドカップ2022」に向け、開催国のカタールでは空港や港湾、鉄道や道路、電力や上下水道などの大規模なインフラ整備が急ピッチで行われてきた。この大規模なインフラ整備に、欧米はもとより韓国、インドなど各国の企業が参入にしのぎを削ったのが近年の動きだ。やはりここでも、プロジェクトを総なめにする中国の姿が浮かび上がる。(ジャーナリスト 姫田小夏)

カタールの水事業で健闘する日本企業

 サッカー・ワールドカップ(以下、W杯)のテレビ放送観戦中、合間に挟まれるCMは日本の“もう一つの闘い”を映し出していた。トーブといわれる白い民族衣装に身を包んだ男性が「砂漠に川を作るようなものだ」と語るそのセリフは、クボタ(本社・大阪市)が乾燥地帯のカタールで取り組んだ貯水池事業の難しさをほのめかす。

 この貯水池事業は「カタール国家ビジョン2030」の中に位置づけられた「上水道メガリザーバープロジェクト」だ。東京ドーム約8杯分の水をためるための24個の貯水池と480kmの送水管を新設するというもので、クボタは総延長距離約480kmの約3分の2にあたる約300kmの水道管(東海道新幹線の東京駅~愛知県・三河安城駅間に相当)を数百億円という金額で受注し、2015年にカタール側に引き渡した。加えて34台のポンプを受注した。

 一方、中国もこの事業に参入した。中国葛洲坝は「上水道メガリザーバープロジェクト」における2つの貯水池事業を39億元(約740億円)で落札、2015年に建設を開始した。長さ305m×幅150m×深さ12mの大きさの貯水池について、中国は「単体で世界最大の飲用貯水池だ」と自賛する。

 これだけではない。中国商務部によると、2020年、中国葛洲坝、中国鉄建国際、中国水電、中国港湾工程などの中国企業が、カタールにおいて新規プロジェクトに調印した。いずれも国務院の国有資産監督管理委員会に直属する中央企業である。

 振り返ると、中国とカタールが国交を樹立したのは1988年のこと。資源外交を重視する中国は2014年に外交関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げし、カタールが「一帯一路」に加わってからは2カ国の距離は急速に縮まった。

 データウエアハウス「TrendEconomy」を見ると、2021年の時点でカタールの輸出入において、中国が首位に立ったことがわかる。