保険ラボ

22年は夏以降、コロナ禍で外出自粛を続けた反動で人々の旅行熱が沸騰。それに伴って自動車事故が増加している。火災保険は値上げと契約期間短縮を行った。業界を揺るがすビッグモーター問題も含め、23年に取り組む課題はどのように捉えているのか。「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日新年合併特大号に掲載したインタビューの拡大版をお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 藤田章夫、片田江康男)

自動車事故の増加と円安の悪影響を注視
火災保険はオールリスク型の見直しが必須

――2022年は人の移動が復活し、自動車事故が増えてきました。23年へ向けて自動車保険の収支への影響は。

“リベンジドライブ”が増えている影響から、事故件数はコロナ前の19年度の水準に戻りつつあります。

 中身を分析しますと、一般道での事故はそれほど増えていませんが、高速道路上の事故が増えていることが気がかりです。事故の衝撃が大きくなるため、保険金単価が上昇し、それが自動車保険事業の損害率(保険料収入に占める保険金支払い額等の割合)悪化の一因となっています。

 22年10月以降は全国旅行支援も始まっていますので、事故件数や損害率にどう影響していくか注視していく必要があります。

 加えて、円安の影響も無視できません。車の修理に必要な部品や塗料などの価格の高騰につながっていきますので、保険金の支払単価を押し上げることになります。

――足元では半導体不足で自動車生産台数が減少するなど、23年以降も自動車保険は逆風なのでは。

 半導体不足やガソリン価格の高騰など、自動車のマーケットに対して魅力が下がる可能性はあります。ですが、メーカー各社は続々と魅力的な車を発売しています。

 それに、地方ではまだまだ車は生活必需品。中長期的に自動車需要が大きく下がることはないとみていますので、自動車保険事業の先行きについて大きな心配はしていません。

――火災保険は22年10月に値上げと、契約期間の上限を10年から5年に短縮されました。収支改善へ向けた課題を教えてください。

 22年は3月に福島県沖での地震、台風14号や15号、さらにひょうや線状降水帯から発生する落雷などで被害が発生しました。今後も、こうした自然災害の発生は避けられないでしょう。