写真:米国のジョー・バイデン大統領Photo:EPA=JIJI

11月8日に行われた米中間選挙。異例の大接戦の末、12月7日にようやく全議席が確定した。日本ではトランプ前大統領の動向や物価高が争点として盛んに報じられていたが、現地取材を通して分かった実際の争点は異なるものだった。また、米国の選挙予測が外れるのには構造的な理由があった。(ジャーナリスト 池上彰、増田ユリヤ、構成/梶原麻衣子)

トランプ前大統領の動向や物価高よりも…
女性たちが強烈に怒ったこと

池上 11月8日に行われた米国の中間選挙。私も増田さんも以前から中間選挙の現地取材を行ってきましたが、日本でこれほど話題になったのは今回が初めてではないでしょうか。

 共和党と民主党で異例の接戦となり、接戦州では票の集計作業に時間がかかり、大勢が判明するまでに1週間以上もかかりました。上院の最後の1議席をめぐり、1カ月がたった12月6日にジョージア州で決選投票が行われ、ようやく全議席が確定しました。

増田 今回は選挙前から、共和党のシンボルカラーの「赤」にちなんで「レッドウェーブ(赤い波)が起きる」、つまり共和党が上下院両方を席巻し、民主党は惨敗するだろうという予測も多く、日本でもその予測がそのまま報じられていました。

 しかし結果は、下院こそ共和党が過半数を上回ったものの、ほぼ拮抗状態。予想されたほどの共和党の波は起きませんでした。

 特に日本ではトランプ前大統領の動向や物価高が多く報じられていましたが、取材を通して実感したのは、誰もが争点として捉えていたテーマが他にもあったことです。