“下流民か、自由民か。地球規模で人生は二極分化する――”。2025年における働く人々の様子を生々しく予測し、ベストセラーになった『ワークシフト』。この本の著者であるロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授は、「漫然と迎える未来」には孤独で貧困な人生が待ち受け、「主体的に築く未来」には自由で創造的な人生があると指摘する。教授は、「3つのシフト」によって「漫然と迎える未来」を変えられると言うが、果たして私たち日本人は未来を変えられるだろうか。現在、来日記念セミナーを直前に控えているという彼女に、「3つのシフト」とは何か、さらに日本人が孤独で貧困な人生を迎えないための方策を聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)

――ベストセラーになったあなたの著書『ワークシフト』(原題『The Shift』)では、2025年を見通し、グローバリズム、テクノロジー、社会などの変化がどんな仕事環境をもたらすかを予想し、漫然と未来を迎えた場合と、積極的に介入した場合のシナリオが描かれています。漫然と過ごしていると、繁栄から取り残され、新しい貧困層の一部になってしまう。自分の将来に対してこれほどまで積極的に介入しなければ、意味ある仕事と人生が得られなくなるという時代は、歴史的にもなかったことではないでしょうか。

リンダ・グラットン(Lynda Gratton)
ロンドン・ビジネススクール教授。経営組織論の世界的権威。イギリスのタイムズ紙で「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりに選ばれた。欧米やアジア企業へのコンサルタントも務め、現在シンガポール政府のニューマンキャピタル・アドバイザリーボードのメンバー。『ワークシフト』以外にも『HotSpots』『Glow』『Living Strategy』などの著書がある。次の著作は、ワークシフトに関する企業指南書となる予定。
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 確かにそうです。われわれは起こった危機に対処するということには慣れているのですが、今は環境が急速に変化していて、積極的に考えることが求められているのです。これほどまでに未来を予想し、そこから逆算して現在何をすべきかをはじき出さなければならなくなったのは、人類の歴史で初めてのことでしょう。

――そうは言っても、毎日仕事や生活に追われ、未来に合わせて自分を作り替えていくのは簡単ではありません。自分の将来について積極的な介入を意識し続けるためには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。

 世界を見渡せば、社会的な障害を背負った地域がたくさんあります。たとえば、アフリカのサハラ砂漠南部のような場所では、インターネットもなければ仕事もない。その他の国々でも、教育が行き渡っていないというところがある。こうした地域は、将来非常に不利な立場に置かれることになるでしょう。

 しかし、日本にも興味深い側面があります。日本は、教育レベルも高く、歴史的に優れた大企業が育ってきました。ところが、拙著へのコメントで日本の読者は「どうすることもできない」と言ってくることが多いのです。いったい、人々が自身で責任を持って変わろうとすることを何が妨げているのか。今回の来日では、それも探ってみたいと思っています。