象印マホービンPhoto;JIJI

象印マホービンが来年2月に開く予定の定時株主総会で、買収防衛策の廃止を求める株主提案が出されたことが12月26日、分かった。近く公表する。象印は今年1月、筆頭株主の中国系投資ファンドへの対抗措置とみられる防衛策を導入したが、別の大株主が反発した形だ。安易な防衛策導入に市場の視線は厳しさを増している。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

象印vs中国家電創業家ファンドの攻防戦に
「第三者」の株主参戦!その提案理由は?

 大正時代の1918年に創業した象印マホービンは、魔法瓶の断熱技術を応用し、ご飯の長時間保温を可能にした電子ジャーを70年に発売。現在の主力商品である圧力IH炊飯ジャーやステンレスボトルなどの「象印ブランド」は、日本ではよく知られている。

 2010年代半ばには中国人旅行者が炊飯器などを“爆買い”し、その対象となった象印ブランドの認知は海外にも広がった。そんな日本の老舗メーカーに目を付けたのが、中国家電大手の広東格蘭仕集団(ギャランツ)である。

 ギャランツは羽毛製品の生産会社として78年に創業し、90年代に白物家電メーカーに転身した中国新興企業だ。創業者の孫で、個人ファンドのエース・フロンティア代表を務める梁恵強氏は、21年のダイヤモンド編集部のインタビューで「象印の魅力的な商品は海外で売り上げを伸ばす余地がまだまだ大きい」と、投資の狙いを明かしていた(『象印に社外取選任要求から一転して共同開発へ、中国巨大家電メーカー創業家の狙い』参照)。

 ギャランツと象印は21年3月に家電製品の共同開発契約を締結したが、象印が今年に入って導入した買収防衛策は、明らかにギャランツに対する警戒心が原因だと市場ではみられている。そして両者の攻防戦を静観していた別の大株主が今回、象印が導入した買収防衛策にブチ切れ、“NO”を突き付けたことが関係者への取材で分かった。

 コロナ禍の規制緩和が進み、23年は中国人観光客の増加が見込まれる中、“インバウンド銘柄”の代表格とされる象印の周囲が、再びきなくさくなっている。次ページから提案の中身を明らかにする。