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スマートフォンの理想と現実

「ドコモは大丈夫なのか?」
ケータイ産業の中の人たちまでが囁く懸念の深層

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第43回】 2013年2月8日
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 しかしKDDIからの顧客奪還は、まだもうしばらく時間を要するし、ここまでのところKDDIに対して重大な不満を抱いているという声は聞こえてこない。またSBMはSBMで、おそらく価格戦略によってこれをしのいでいくだろう。もともとNTTドコモとSBMの顧客層が異なることを考えれば、それも容易でもない。そしてドコモスマートフォンの買い替え需要の喚起は、他メーカーとの縁を切ることにもつながりかねない。

 いくら市場がそれを煽っても、総合的に考えて、NTTドコモのiPhone導入は、同社にとってリスクが大きすぎる。おそらくこうした思考と判断こそが、ここまで導入に踏み切れていない背景の一つといえるだろう。

数年かけた「借り」は数年かけて返す

 NTTドコモがiPhoneを提供するのも、消費者からすれば悪い話ではない。しかしそれで彼らが劇的に回復するとは、やはり思えない。むしろ同社が進むべき道は、「この2-3年で起きなかったこと」と「これから先に起きること」を見定めて、粛々と対応を進めることにあると、私は思う。

 では「起きなかったこと」とは何か。まずは、地方部でのスマートフォン移行。東京圏の通勤電車などを眺めていると、もはやスマートフォンを持っていない人はいない、というような景色が広がっている。しかしクルマ社会の地方部においてスマートフォンは使い勝手が悪く、またそれ以前にパソコンの利用さえも十分に浸透してはいない。地方の中核都市でさえ、すべてはこれからというのが現状だ。

 また、通信料金の従量制への移行も、結局進んでいない。既存インフラの限界とLTE投資の重しを考えれば移行が進むはずだという声は、販売現場の過当競争によってあっさり否定されつづけている。それどころか、MNPインセンティブ競争で、「家族全員MNPしたら20万円もらえました!」というような本末転倒の状況に陥っているのが現状だ。

 スマートフォンのサービス側でいえば、通信事業者主導によるプラットフォームの普及も、まだ道半ばという状況である。各社ともここのテコ入れを進めているところだが、ニワトリとタマゴの関係でもあり、この問題を解いて将来を切り開くには、もう少し時間を要するところだろう。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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